21世紀に入って以降、木質エネルギー利用が急伸
木質原料の利用は、マテリアル利用とエネルギー利用に大別される。ドイツでは、21世紀に入ってからエネルギー利用が急伸し、近年では消費量においてマテリアル利用と肩を並べるまでになっている(以下の図表1参照)。
[図表1]木質原料のマテリアル利用とエネルギー利用 ドイツ、1987~2015年
2010年代になってマテリアル利用とエネルギー利用とも6500万立方メートル前後で安定しているが、両方を合計すると、1.3億立方メートルにもなる。前述のように、近年の木材伐採量は5000万~6000万立方メートルのレベルでしかない。
木材の利用量が、その2倍にもなるのはどうしたわけか。その第一の理由は、「木質原料のバランスシート」と呼ばれる新しいタイプの需給表に基づいているからである。
木質エネルギーの半分は「家庭用」に
通常の「木材需給表」は、国内の森林から伐り出された木材や海外から入ってきた木材が、どのように使われるかを追跡している。木材は「カスケード」的に利用されることが多いが、二重計算は許されない。ところが、新しいバランス表は、消費サイドからの積み上げになっていて、二重計算が至るところに出てくる。
以下の図表2を使って説明すると、山から下りてきた製材用丸太の量は左側の「発生源」に記載され、それが、そのまま右側の「仕向け先」の製材業に転記される。この丸太を製材すると、樹皮、おが屑、背板、端材などが発生し、左側の製材副産物の項に記載される。さらに、このうちの背板は、木質パネルや紙パルプの原料になるから、右側の該当項に、その量が記入される。木質パネルや紙パルプの製造では、燃料用の木屑やパルプ廃液が発生するが、この分は、発生源と仕向け先の該当項目の双方に記入される。
[図表2]木質原料のバランスシート ドイツ、2010年 単位:実材積換算100万m3
いずれにせよ、木材のカスケード利用が増えれば増えるほど、利用総量は大きくなっていく。2010年の実績では、製材用丸太100の投入に対して総利用量は144になっていた。つまり「カスケード係数」は1.44である。
端的に言えば、在来の国産丸太の需給表でとらえられていたのは、発生源にある「丸太計」だけであった。
しかし、実際に消費されている木質原料には、丸太を伐り出した後に残される森林残材や樹皮があるし、また、公園緑地や街路樹の伐り透かし、剪定で発生する「修景残材」もある。さらに、各種の産業残材やリサイクル材も、二重計算の有無とは関係なしに計上するしかない。
最後に指摘しておくべきは、生産統計と消費統計のギャップである。2012年の全国資源調査では、10年前との比較において、ドイツの森林から年平均7570万立方メートル伐り出されたと推計されたが、生産統計で捕捉されているのは5680万立方メートルであった。その後の追跡調査で判明したのは、特に小規模な私有林における燃料用広葉樹の伐採量が過小に推計されていたようである。
上の図表2によると、木質エネルギーの利用で家庭用は全体の半分近くを占め、1メガワット以上の熱プラント・発電プラントの23%を大きく凌駕している。