前回に引き続き、「カーボンプライシング」とは何かを詳しく説明します。今回は、木質バイオマスのコスト問題についても併せて見ていきましょう。※本連載では、筑波大学名誉教授、日本木質ペレット協会顧問、日本木質バイオマスエネルギー協会顧問である熊崎実氏の著書、『木のルネサンス――林業復権の兆し』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、日本とドイツにおける「木質バイオマス」エネルギー利用の現状と今後の展望を探ります。

地上の木質バイオマスは「有効利用されていない」?

前回の続きである。さて、以下の図表の左の端にコストが負になるケースが幾つか出ている。

 

[図表]温室効果ガス削減の限界費用曲線木質バイオマスによる熱供給と発電を想定
した仮想図

出所)限界費用曲線(MACC)の概念は、英国の気候変動委員会(CCC)    “Building a low-carbon economy-the UK’s contribution to tackling climate    change”2008による
出所)限界費用曲線(MACC)の概念は、英国の気候変動委員会(CCC)
“Building a low-carbon economy-the UK’s contribution to tackling climate change”2008による

 

なぜ、そのようなことが起こるのか。地上の木質バイオマスは、すべてエネルギー価値を持っているけれども、それが有効に利用されないまま廃棄物として処理されるケースが多い。

 

木材加工場で年中発生している工場残廃材や、自然管理で発生する修景残材などにしても、ある程度まとまればボイラで燃やして熱や電気に換えることができる。大枚を払って一般廃棄物ないしは産業廃棄物として処理することに比べれば、二酸化炭素の削減と並んで大幅なコスト削減が実現するだろう。

バイオマス利用で優先されるのは、発電よりも熱生産

いずれにしても木質バイオマスのエネルギー変換は、MACCのマイナスからプラスの領域に広がっている。地球温暖化対策の観点からすれば、MACCの小さい技術ほど好ましい。バイオマスの利用では、間違いなく発電ではなく熱生産が優先されるだろう。変換効率に大きな違いがあるからだ。

 

発電では、せいぜい30%止まりであるのに対して熱生産なら80%ないし、それ以上が期待できる。例えば、高位発熱量4メガワット時/トンの木質チップを1トン使って発電した場合に、平均的な化石燃料による発電に比べて、どれくらいの二酸化炭素が削減できるかというと、およそ0.5トンほどである。同じ量を熱生産に向ければ1トン以上は節約できるだろう。

 

ただし限界費用は、エネルギー変換技術の熱効率だけでなく、それ以外の要因も強く効いてくる。例えば、残廃材が発生した場所から変換プラントまでの距離、その残廃材に要求される前処理の程度、変換プラントの近くに適当な熱需要があるかどうかなどの要因が、それだ。

 

一般的に言って、限界費用を低める有力な手立ては木材加工との連携である。例えば、製材工場のCHPプラントであれば、自社の残廃材が利用できるし、製品の乾燥などで熱の出口も確保されている。

 

逆に、蒸気サイクルの発電専用プラントでも出力規模を大きくすれば、発電効率は多少改善されるが、木質燃料の大量集荷でコストが嵩むようだと、二酸化炭素削減の限界費用は大幅に上昇してしまう。

 

バイオマスのエネルギー利用は、実に多様である。熱供給や発電、熱電併給、各種の輸送用燃料の製造などだが、これらが実際にどれほど二酸化炭素の削減につながるかを共通の尺度で客観的に評価・比較すべきである。

 

FITの買取価格は、政策的に決められたものだが、これについてもMACCをきちんと計算し、支援を続けるだけの価値があるかどうかをよく検討すべきだ。限界費用の低下が見込めないようなら、早急にやめるべきである。

 

この話は次回に続く。

木のルネサンス――林業復権の兆し

木のルネサンス――林業復権の兆し

熊崎 実

エネルギーフォーラム

森林政策の第一人者が、地域における「エネルギー自立」と「木材クラスターの形成」を説く。

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