入居者が迷惑し、大家への金銭的なリスクもある「漏水」
物理的な不具合の対処の中で、特にダメージが大きい案件に「漏水(ろうすい)」があります。
そのため、本連載では、特に漏水対応テクニックをご紹介します。漏水は、入居者に迷惑がかかり、保険対応ができない場合は、大家さんに金銭的負担がかかります。仮に保険の対象になっても、水浸しになっている室内を見て管理会社として何もしないでいるわけにはいかないので、雑巾やタオルを使って拭き取り作業をすることになり、担当者としても忙しい案件なのです。
突然予告なく発生するのも漏水の特徴ですが、なぜか水道業者がお休みの土日に起こる傾向があるように思います。
漏水の種類は大きく分けると①雨漏り、②排水管不良、③給水・給湯管不良、④入居者の過失、⑤その他となります。どのようなものか具体的にご説明しましょう。
老朽化だけでなく、建築時の施工不良で起こる場合も
雨漏りは、老朽化による屋根や外壁の劣化が原因となる場合が多いのですが、新しい物件でも建築時の不良工事や設計上の問題で漏れることがあります。多くは、台風やゲリラ豪雨など、通常よりも多く水がかかったことによって発生します。
修理に関しては専門業者に任せますので、管理会社としての対応をご紹介いたします。通常雨漏りの第一報は入居者からあります。大体は大雨が降っている最中の連絡ですので、その場で修理することは難しいのですが、状況確認と応急処置はできます。この初動の段階では入居者はショックを受けている状態で、どうすればよいのか大変不安に思っています。
私が経験した案件で、古い戸建ての一階にあるキッチンの上部から雨漏りしたことがありました。当初は、「早く直してくださいね」程度にしか言われなかったのですが、試しに施工した工事が不発に終わり、大雨が降る度に「また漏れた」の連続で、「いい加減にしろ!」と怒鳴られてしまいました。入居者にしてみれば、工事が入る度に在宅してもらい、何度も期待が裏切られたことで、怒りが爆発したのでしょう。
私は怒りが爆発した後から担当したのですが、正直言ってかなりの激怒具合で、話をすることすら難しい状態でした。この貸家の大家さんに至っては、「これ以上工事するのに追加料金が必要だとは納得できない!」という具合に工事が進められなくなるという最悪のパターンでした。結局は、修理業者を変えて工事を進めたのですが、試しながらの工事だと説明をしても、再工事が増えれば不満に思われるのは当然のことです。
ですから、どんなに詳しく説明をしていても、施工期間が長引けば不満に思われるので、「今度は大丈夫だと思います」など楽観的なことは極力言わずに、「難しい個所の工事なのでご迷惑をおかけして申し訳ないです」と、気持ちの面でフォローすることが重要となります。
ということで、雨漏りの対応に関しては、入居者対応をしっかり行い、試しながらの工事であることをしっかりご理解いただいたうえでわかりやすい説明をするのが、大切なポイントであると言えます。
初動では真摯な対応を、修理業者の選定は慎重に
◆クマの対処法
①初動では真摯な対応が肝心
雨漏りで困っている人に対しては、初動が大切になります。そんな時に「この天気ですので何もできませんから」などと、サラッと答えてしまうと怒りが爆発するわけです。物には言い方がありますので、まずは現場へ行くと伝えます。たとえ別の用事があった場合でも、なるべく優先するべきなのですが、どうしてもすぐに行けない場合は、「申し訳ありませんが、○時頃の到着となります」と、遅れてでも訪問する姿勢を伝えます。
そして、現地に到着してからは、入居者の話をまず聞きます。「何時くらいから」「どこの位置で」「どのような感じで」というのを聞き、メモをとり、できる限り詳細な写真を撮影します。正直言うと、その場で修理できるものではありませんので、現地確認をすることと、専門業者や大家さんに、できる限り詳細に報告することが私たちの仕事となります。
さらに、もう一つの重要な対応が、水の拭き取りです。雨漏りの場合は給水配管からの漏水と違い、大量に漏れることは少ないですが、きれいな拭取用のタオルや雑巾を持参して漏れている個所を拭き取り、必要に応じてバケツで落ちてくる水を受けるようにします。
手ぶらで行って状況確認だけして帰るよりも、大変さを共有する姿勢を見せることで、入居者も冷静になってくれるものです。
②修理業者の選定は慎重に
次の対応は修理業者の選定です。建物を建築した会社に依頼することが多いですが、新築の保証期間でもない限り、修理費用を払うのは大家さんなので、当然ながら大家さんに依頼先を決めてもらいます。「特に決めてないからお宅で探してよ」と言われた場合には私たちが修理業者を探すことになりますが、雨漏りの場合はプロの業者であっても試しながら修理するものなので、依頼主である大家さんに、しっかりと工事の手順や、原因個所の特定について、単純な案件ではない旨を説明する必要があります。
わかりやすい伝え方としては、「大掛かりな工事が必要かどうか、怪しい所を試しながら施工する方法なので、原因個所の特定までには様子見の期間を含めて時間がかかり、追加工事の際はさらに費用がかかります」と一発で直ることが少ないのが実情であると伝えます。間に入る以上、大家さんから見れば、管理会社に工事を任せた形になりますので、工事の方法や進捗具合等、予告的な説明が必要になってくるわけです。
また、一番の当事者である入居者へのフォローも忘れてはなりません。たとえ漏れている個所が出窓の上部からだから、バケツを置いておけば日常生活に影響がないという場合でも、バケツを置くこと自体が許せないことだってありますので、大家さんに説明するのと同じような丁寧な説明が必要となります。