必ずしも「入居者が原因」とは決めつけられない
排水管の不良による漏水は、主に「詰まり」「脱管」「老朽化」が想定されます。「詰まり」に関してよくあるパターンが、入居者がトイレを詰まらせたり、台所の排水を詰まらせたりしてしまうものです。この場合、基本的には入居者の過失となり、費用請求も入居者にすることになります。しかし、ここで決めつけてしまうのは危険です。明らかに便器に物を詰めてしまった場合は、入居者も身に覚えがありますので、もめることは少ないですが、トイレでも台所の排水でも、敷地にあるマンホールから汚水が噴き出ているとなると、その入居者の過失とも言い切れなくなります。
排水系の詰まりに関しては、長年の汚れが管に溜まり、特に冬場になると塊ができて詰まりを発生させることがあるからです。他にも、植物の根が管の中で育ってしまい、流れをせき止めることもあります。
それらの原因では、通常通りの使い方をしていた入居者なら、純粋な被害者となりますので、その人に費用請求が発生するとは決めつけられないわけです。ですから、「お客様の使い方に原因がある場合は、費用が発生いたします」と丁寧に伝えたうえで原因究明することが大切なのです。
▼トイレの詰まり対応
ペーパーの流しすぎでトイレを詰まらせてしまった時の対処法は、ラバーカップ(半球上の吸引ゴムの付いた棒)を用います。基本的にはゆっくりと便器内に水を溜め、ラバーカップを沈めていき、真空状態を作り出してペーパーの詰まりを引き出し、水の流れをつくる「引き」が大切になります。
まれに、物を流してしまったという場合には、便器の取り外しが必要になりますので、よほど自信がある場合を除いてはプロの業者に頼んだほうがよいでしょう。トイレの場合は、お風呂以上に頻繁に入居者が利用するものですから、自分たちの行った作業が原因で、さらに入居者の迷惑となるのは避けたいところです。
プロに頼む前に「トーラー」を使ってみる
▼雑排水の詰まり対応
よくある例が、台所の排水詰まりです。一般的には排水にネットをかけて細かいゴミを流さないようにするのが常識かと思いますが、なかには排水口に生ゴミや油を流してしまったり、洗面所の排水に歯ブラシを詰まらせたりしたケースもありました。基本はトラップ(水をためて悪臭を防ぐ部品)型の排水パイプを外して詰まりを除去します。このパイプの中に詰まりの原因となるものがあれば、入居者側に責任があると判断しやすいのですが、問題は排水パイプから先の配管が詰まっていた場合です。この場合は、プロに頼む前に試しておきたいのが、トーラーを使っての塊除去です。
◆クマの対処法
①作業をする場合は、まず敷地内の生活排水用の枡(ます)の中を確認します。
②エルボと呼ばれるL字管を外し、水の流れをせき止めている方向を確認します。もっともこの段階で枡があふれていれば、枡よりも外側が詰まっていることになりますが、大体の場合、室内側での詰まりかと思います。枡にあるエルボ自体に脂が詰まっていることもあります。
③詰まりの方向がわかったらトーラーを使います。トーラーとは、長い金属製のワイヤーのようなもので、排水口に突っ込んで行き、手ごたえのある部分に到達した段階で、力を加えて脂等の塊を除去するものです。大体ここまでやって、歯が立たなければ高圧洗浄機を持っているプロにバトンタッチしたほうがよいでしょう。
その場合、当然費用はかかりますが、安い費用のトーラーで直る場合も多いので、プロを呼ぶのは最後の手段とするのが費用を抑えるコツです。なお、プロの使う高圧洗浄は音が大きいため、作業が夜間に行われる場合は、近隣へ事情説明を兼ねての挨拶が必要となります。苦情が二次クレームとなる相手は入居者だけとは限りませんので注意が必要です。