今回は、原状回復に関するトラブルを回避する方法を見ていきます。※本連載は、賃貸管理トラブル解決の達人、クマさんこと熊切伸英氏の著書『帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル』(株式会社 住宅新報出版)より一部を抜粋し、賃貸トラブル対処術を事例別に紹介していきます。

今後「原状回復」関連のトラブルは減る!?

賃貸管理の現場では、あらゆる取り決めをします。

 

最初に物件の媒介や管理委託に関する契約書を大家さんと締結し、募集に入って客付け完了後は、重要事項の説明をして賃貸借契約を締結します。

 

このように、書面の数だけでもさまざまな取り決めをしていることになるので、それだけトラブルも発生します。特に借主さんとの契約では、原状回復に関するトラブルが多いように感じます。

 

それでも、国土交通省が平成10年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を取りまとめ、その後改定によって追加などが行われ、自分の感覚的には「かなり」トラブルが減ったと思っています。また、書籍『帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル』序章でも説明しましたが、民法改正により明文化されることで、今後のトラブル減に期待が持てます。

 

ふた昔前は、「退去時は原状に復すること」程度の賃貸借契約書の条文で、退去時のリフォーム費用を請求していたのですから、トラブルが起きないほうがおかしなくらいでしたが、ガイドラインが広まってきた頃からは、「ハウスクリーニングを行う、畳の表替えを行う」等の特約文言が条文に入り、トラブルが減ってきました。

 

しかし、なお、トラブルが起きるのは、「金額を具体的に聞いていない」「負担区分が明確でない」といった「説明不足」によるものなのではないかと思います。

 

管理会社・不動産会社的には、「すべて明文化することで、言った、言わないをなくしたい」と考えるわけで、どんどん契約書の特約事項が増えていますし、賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)のように「通常は貸主が負担するべきものを特約で借主が負担することを了解しました」と、念押しで説明することで、かなり改善されています。

 

やはり、基本は「説明すること」「理解してもらうこと」「納得してもらうこと」ですし、「取り決めがないこと」を極力減らす努力が必要なのです。

トラブル発生時には「誠実に協議する姿勢」が重要

それでも、契約書では判断できないことが起きてもめてしまった場合は、賃貸借契約書に基づく解釈を丁寧に主張し、借主側に「何を根拠にしているか」を伝えます。

 

法律上決まっていることであれば言いやすいのですが、そうでなければ似たような判例を主張します。一番よくないのは「大家さんがそう言ってるんだからしょうがないでしょ」という態度です。

 

いろいろな大家さんがいますが、賃貸借契約の条文や法律、判例でも解釈できないのであれば、「誠実に協議する」ということが前提ですので、間に入っている管理会社の伝え方が大切です。

 

もし、大家さんの言っていることがおかしいと思えば、その旨を管理会社の見解として伝えるべきだし、大家さんが管理会社を納得させられずに借主側と争うのであれば、白黒つけられるのは、「裁判所」になります。

 

しかし、いきなり「訴訟」にならなくても「民事調停」の場を設けることができますし、弁護士の先生にお願いせずに本人が行えば、数千円程度で終わることもあります。

 

私の場合は、貸主、借主のどちらかがおかしいことを言っていると思ったり、平行線になるような話を突き詰めろと言わたりするようであれば、「調停か訴訟をしてください」と伝えています。

 

滞納による裁判は何度も経験しましたが、今のところ、解釈違いのトラブルは訴訟にならず、話し合いで解決できています。

 

このように、もめ事の解決は、裁判所の仕事ですが、もめないようにするのは貸主と借主の間に入っている不動産業者・管理会社の仕事です。したがって、すぐに投げ出すようなことはしませんが、担当個人や管理会社ができることには限界がありますので、最後は裁判所に決めてもらうのが一番よい方法なのです。

 

◆まとめ

 

●「クレーム」ではなく、「サービスリクエスト」と考える。

●一次対応で解決できれば、トラブルの拡大を防ぐこともできる。

●一次対応のテクニックを磨くことは、大家さん、入居者、管理会社の三者にとってメリット。

●受け手の対応によって普通の人がクレーマーになる可能性がある。

●もめ事の調整業務は管理会社の仕事だが、平行線になった場合の最終的な判断は、弁護士の先生、裁判所などに任せる。

本連載は、2018年2月19日刊行の書籍『帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル』(株式会社 住宅新報出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル

帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル

熊切 伸英

株式会社 住宅新報出版

初版『助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル』発刊から7年。 賃貸管理トラブル解決の達人、クマさんが帰ってきた! 長年の経験に基づく、現場に役立つリアルな事例を交えた賃貸管理トラブル解決のヒントを伝授!

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