まずは「水漏れの原因個所」の特定を
漏水対応の中で、雨漏りと並んで大変なのが、給水・給湯管からの漏水です。排水の漏水と違って、水が漏れっぱなしになるのが特徴です。
◆クマの対処法
①漏れている個所を確認
この場合、排水系と給水系では漏れ方が違ってきます。排水では、水を流した後に漏れが出るので、漏れは断続的となります。これに対して給水系は止水栓を閉めない限り漏れ続けます。そういった違いがあるので、入居者からの連絡内容と現場状況を見て判断をします。
②水道メーターのパイロットと呼ばれる銀色の回転盤の確認
目視で回っていることがわかるようであれば、かなりの漏れ具合です。ほとんどが、数時間しないと回りがわからないほどの微量の漏れであることが多いので、メーターの写真を撮って数時間単位で回りを確認することになります。経験上一番多かったのが、給湯用の銅管ですが、漏っている個所に近い水栓のジョイント部分(つなぎ目)からあたりをつけていきます。このあたりで発見できれば、ジョイント部分の直しで完了するラッキーなパターンです。
給水管が外れてしまう場合は、大量の水が流れてすぐに気がつくのですが、そのような連絡が来た場合は慌てず、「止水栓を閉めてください」と伝えます。物件の止水栓は、大抵が共用廊下のパイプスペースにあるか、建物外部の敷地に設置されていますので、電話で説明できるように止水栓の位置程度は管理会社として把握しておきましょう。
③問題はピンホール漏水
これは、ピンホールと呼ばれる管に小さな穴が開くタイプの漏水です。私は、このピンホール漏水については、水道業者でもないのにかなりの件数を体験しました。どこで漏っているのか発見しにくい一番の理由は、管が被覆されていることです。銅管を樹脂で被覆してあるのがほとんどなので、水が染み出している個所は単純に水の出口になっているだけで、漏水の穴がある個所ではないのです。
④確認不能であれば床・天井・壁を開口
まずは、点検口を確認し、根気よく探っても漏水個所が不明の場合は、床や壁、天井を開口します。既に水が染み出しているのであれば張り替えが必要になるので躊躇せず開口し、銅管の被覆をカットしてみます。
⑤漏水方向確認により個所を特定
切り口を見て水が出てきている側が判断できます。水栓(出口)に近い側か、水道メーター(入口)に近い側かに分かれますので水が染み出る方向が特定できます。当たりをつけてこの作業を繰り返すのですが、大体の位置が特定できれば管を切断して新しくジョイントすればよいので、水道工事のできる業者に管を新設してもらいます。あまりにもこの作業が難航するのであれば、既存の管を放棄し、新規の管に取り付け直すバイパス工事を行います。
⑥水道工事業者による配管交換
ピンホール漏水では、配管のつぎかえ工事が発生するので、水道工事業者への依頼が必須となりますが、理想的な対応としては、業者が対応してくれるまでの間に、漏水個所の特定から、水のふき取り、開口時に出た石膏ボードの片づけ等、応急措置まで完了することです。業者が日曜日が休みで対応できなくても漏水個所を特定する作業までやっておくことで、以降の工事を速やかに進めることができ、入居者の負担や不満が軽減されます。
⑦一定期間乾燥後復旧
内装業者の出番となりますが、濡れが激しかった場合は、バキューム掃除機や布等で水を抜き、充分乾燥してから復旧を行わないとカビの原因となりますので、入居者の理解を仰ぎ、日数を経過した後に内装復旧工事をして完了します。
すべての工程については、今後の参考と保険対応のためにできるだけ多く写真や動画撮影をしておきます。
保険は手厚い内容で付保しておくべき
▼保険対応についての注意
老朽化したことが原因での漏水は保険の対象外となるのが基本なのですが、入居者への被害を賠償できたり、内装の損害を補償してくれたりする場合もあります。保険は手厚い内容で付保(ふほ)しておくべきだと事故の度に思うのですが、事故が起きてから後悔することが少なからずあるもので、管理会社の立場としては、大家さんが損することのないよう、注意して保険会社とやり取りしなければなりません。
保険対応の場合は、詳細であればよいとも限らないため、親しくしている保険代理店等にアドバイスを受けながら必要な写真を選択することをオススメします。