最初の原因は「物的トラブル」か「人的トラブル」
「わかりました。責任者と電話を代わります」
と言われて電話に出てみると入居者が大激怒……。
私は立場上、責任者としてスタッフともめてしまった入居者と話をすることがあります。以前は前記のように、何の前触れもなく、いきなり電話に出ないといけないことが多くあったのですが、さすがに学習しました。
今では、「現在、責任者は不在なので、戻り次第電話させていただきます」と、伝えるように徹底しています。
そうすることで、スタッフから詳しい経緯を聞き取る時間ができるうえに、時間をおくことで激怒している相手の熱が冷めるという効果があります。
スタッフから話を聞く場合に注意しないといけないのは、スタッフが、「私は悪くない」=「苦情を言ってきた人が悪い」=「言いがかりをつけるクレーマー」と報告してくる傾向にあるということです。
「この人はクレーマー」というイメージが頭に入ると、自然と戦闘モードに入ってしまい、売り言葉に買い言葉で、本題から外れて感情のぶつかり合いになったりするものです。冷静になって考えるとわかりますが、人というのは、何かきっかけがなければ激怒などしません。
特に賃貸物件の入居者は、入居審査に通った、社会的に問題のない方々ですので、激怒するには必ず理由があるはずです。
まず、管理会社や大家さんに対して怒りをぶつけてきているわけですので、最初の原因は賃貸物件に関する「物的トラブル」か「人的トラブル」です。
物的トラブルの場合は、「エアコンが壊れて我慢できない」「漏水が発生して部屋が水浸しになった」というような、普通の生活ができないということで、怒りの感情を持つのは当然のことです。しかしながら、気が短い方が初回の電話で怒鳴るくらいのことはあっても、徐々に冷静になるものですし、大半の方は「困っているので直してください」とお願いしてくるものです。
また、人的トラブルについても、初動からいきなり激怒することは少なく、「上の階の騒音で相談があります」のように、助けを求めてくることがほとんどです。
激怒の原因は「クレーム対応の悪さ」
では、激怒する理由とは何なのでしょうか? これがまた、電話を代わり話を聞いてみると、ほとんどの場合、「激怒する理由は受ける側の対応の悪さ」です。
例外もありますが、ここでは、いくつか例を挙げて入居者さんがイライラしてくる態度や雰囲気を説明します。
▼イライラさせる受け手の態度や雰囲気
●受付担当の話し方が横柄。
●低い声で話される。
●なれなれしすぎる。
●やたらと断定したり、話の途中で先走ったりする。
●早口すぎて何を言っているかわからない。
●ホントですかぁ? など、疑われている感じがする。
●まじめに説明しているのに笑われた。
●折り返しするといった約束を破られた。
●対応を放置された。
●たらい回しや、折り返しの電話が遅すぎる。
話や説明が得意な入居者の方ばかりではありませんし、電話なので相手の表情が読み取れません。もともと不満があって電話してきたのですから、ちょっとしたきっかけで激怒モードに突入することは予想できます。
物的トラブルの場合には、いくら自分が丁寧な対応をしていても、修理業者の対応が悪かったらすべてが台無しです。修理業者が時間にルーズだったために、入居者の予定が狂ったという場合も怒りをぶつけられますので、第三者に対応を委託する場合は、特に慎重になるべきです。
怒っている理由は、発生した問題に対する怒りではなく、対応したスタッフの話し方や声質、解釈がズレて話が噛み合わない等の理由や、約束の時間、言ったことを守らないという「受ける側の問題」であることが多いのです。
根本的な原因となっている問題に関しては適切に対処するのは当然のことですが、「相手が怒鳴ってきたからこちらも怒鳴り返した」などは、物理的な問題だけでなく「感情の問題」も解決しないといけなくなります。
▼相手をイライラさせないための注意事項
●相手の話をよく聞く。
●わからない点はしっかり確認する。
●適当に答えたり断定したりしない。
●普通の声質と音量と速度で丁寧に話す。
これらを再認識することが入居者の安心につながり、物件の価値向上につながるのです。一般的には、ここまでで完了するのですが、度が過ぎて脅迫的な言動をしてくる相手もいますので、その場合の対応については書籍『帰ってきた 助けてクマさん! 賃貸トラブル即応マニュアル』第4章でご紹介します。