前回は、資産の圧縮率と収益性のバランスについて説明しました。今回は、資産として「残すべき不動産」と「売るべき不動産」を見分ける方法について見ていきます。

不良資産は思い切って条件のいい資産に買い替える

前回に引き続き「不動産の収益性」についての話ですが、複数の不動産を持っている場合、土地ごとの単独の収益を考えていくといいと思います。他の土地で利益が出ているからといって、別の土地で損失が出てもいいという話ではありません。

 

なぜなら、損失が出ているようなマンションは、いざ処分をしようと思った時になかなか買い手がつかないことも多く、売れても低い価格でしか売れません。購入して不動産賃貸業をやろうと思っても採算が見込めないからです。

 

たとえば、予期せぬ相続が発生して申告までの10カ月以内に土地を売却し、納税資金を用立てなければならない事態になった時など、やむなく収益性が高くて条件のいい土地を手放さなくてはいけなくなるかもしれません。すると、手元には条件の悪い不動産しか残らなくなってしまいます。これでは、資産を守ることになりません。

 

こういうことのないように、今からいつ何があってもいいように、資産の整理、すなわち優劣の順位を決めておくのです。資産整理の極意は、「収益を生む働き者の土地」を残し、「収益を生まないお荷物の土地」を売ってしまうことに尽きます。

 

残すべき不動産としては、次のようなものがあります。

 

●利回りのいい不動産

●駅近の不動産

●自宅とその敷地、など

 

売るべき不動産としては、次のようなものがあります。

 

●使うアテのない農地

●山林

●不整形地

●広大地

●バブル期に買って価格が大幅に下がっている土地

●貸地

●利回りの低い不動産

●共有名義の不動産、など

 

先祖代々の土地で愛着心があったとしても、それが不良資産だったら、売却してもっと条件のいい土地に買い替えることを、私ならお勧めします。そのほうが次の世代にとっては使い道が広がってありがたいからです。「その土地」が大事なのか、「わが家の資産」が大事なのか、落ちついてよく考えてみる必要があると思います。

資産家は「全ての不動産」を残せるわけではない

私の知り合いで、郊外の一等地に1000坪の自宅を構える資産家がいます。周囲は黒塀で囲われ、枝ぶりのいい松などが一部で顔をのぞかせるなど、外から見るだけでもそれはそれは立派なお宅です。

 

庶民としては大変うらやましい話ですが、自宅というのは収益を生みません。相続の時に小規模宅地等の特例が使えるといっても、おおよそ100坪(330㎡。平成27年1月1日以降)しか適用できません。節税の面からいえば、とても効率の悪い資産ということになってしまいます。

 

本人が望むかどうかは別問題として、税金面を優先した資産に近づけるとしたら、たとえば、自宅はもう少し狭くてもいいから新しく建て替えて、半分を賃貸不動産にするという方法もあります。一等地ですから、賃貸マンションにするにしても入居者は集まるでしょうし、ビルを建ててテナントを入れるにしても大手企業が名乗りを上げてくれるはずです。

 

他にもゴルフ練習場やテニスコートのような土地も、今の時代は収益があまり見込めません。そういう意味では、不良資産になる可能性が大です。それを覚悟でそのまま所有し続けるのであれば、連載13回目で紹介した法人化をするのが一番の解決策になるでしょう。

 

ともかく、不動産はいいものは残して、そうでないものはいいものに替えていくという発想が大事です。資産家において、すべての不動産が残せるわけではありませんから。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続税対策は顧問税理士に頼むと必ず失敗する』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

田中 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

税のプロとして認識されている税理士にも得意不得意分野があります。特に不動産を含む資産税に関する対策は、その実務経験がものをいいます。つまり、相続税対策はどの税理士に頼むかで、結果が大きく変わるのです。 本書は、…

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