前回に引き続き、「特別受益」に関するトラブル事例を見ていきましょう。今回は、特別受益を受けていた共有者が持分を売却していた場合の問題を考察します。※本連載では、株式会社中央プロパティー代表取締役社長で、住宅ローンアドバイザー、相続アドバイザーでもある松原昌洙氏の著書、『相続の落とし穴! 共有名義不動産』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、「共有名義不動産」のトラブル対策を事例を交えて見ていきましょう。

特別受益が認められるためには「正式な証明」が必要

前回の続きです。特別受益が認められるには、正式な「証明」が必要になります。事例であれば2000万円の贈与があった記録を示せなければ、特別受益として認められないのです。

 

この特別受益、不公平を取り除くという名目の意味では、「寄与分」にも似ているところがあります。

 

ただ寄与分は、被相続人への貢献度を考慮したものです。ここに直接的な金品の授受はありません。財産の生前贈与といった特別な施しを受けたケースが、特別受益に当たります。

特別受益があったなら、それを踏まえた遺産分割協議を

さて、事例ですが、すでにお姉さんは土地の持分500万円相当を他者に売却してしまっていました。

 

この場合、かなり話は複雑です。姉弟だけでなく第三者にまでトラブルが及んでしまいました。実はこれを書いている今も裁判中となっていて、結末はまだ分かりません。相談者さんとしては土地を取り戻したい気持ちのようですが、判決を待つしかない状態です。

 

少なくとも、特別受益が認められているので、相談者さんが不利となることはないでしょう。お父さんからの相続を過不足なく受け取れるような判決が下ることでしょう。

 

もし相続者の中に特別受益と見なされるような施しを被相続人から受けている人がいるのなら、それを踏まえた遺産分割協議を行うようにしましょう。ここをうやむやにしてしまうと、後で事例のような裁判沙汰にもなりかねません。血縁同士の泥沼化した争いとなり、二度と修復できない関係となってしまう恐れがあります。

 

また、事例のお姉さんのように、相続が決まったからといってすぐに売却するのもやめましょう。必ず相続人たちで話し合いをしてから、その後の処分を決めてください。

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