今回は、共有不動産の「持分の交換」で相続問題を円満解決した事例を紹介します。※本連載では、株式会社中央プロパティー代表取締役社長で、住宅ローンアドバイザー、相続アドバイザーでもある松原昌洙氏の著書、『相続の落とし穴! 共有名義不動産』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、「共有名義不動産」のトラブル対策を事例を交えて見ていきましょう。

不動産を売りたい兄、持ち続けたい弟

収益不動産に関する最後の事例として、持分を交換した珍しいケースを紹介しましょう。

 

「父の遺したアパート2棟を、遺産分割協議により兄と弟である私で相続し、各不動産ごと2分の1ずつの共有持分として登記しています10年ほどこの関係が続いていたのですが、このほど兄から、会社の資金繰りのため、私との持分を合わせて、アパート1棟を丸ごと売却したいという申し入れがありました。私としては収益不動産としてアパートを持ち続けたいと考えています。何か良い解決方法はないでしょうか」

 

お兄さんは早急にまとまったお金が欲しかったようで、持分売却よりも高値が付き、取り分の増える全体売却を相談者さんに持ち掛けました。

 

共有名義不動産を全体売却するには、当然共有者全員の同意が必要です。しかし、相談者さんとしてはアパートを持ち続けたい意向で、両者の意見は対立しています。ごきょうだいの関係を崩すことなく、両共有者の希望を満たす方法は、果たしてあるのでしょうか。

 

今回は不動産を2棟共有していることがポイントです。こういったケースの場合、持分の交換が有効です。

2棟のアパートをそれぞれ半分ずつ共有している状態に

持分の交換、つまりは物々交換になります。「あなたの自家用車と、私の軽トラックを交換しましょう」ここであなたがイエスと答えれば物々交換は成立です。「いやいや私の自家用車の方が価値は高いのだから、軽トラックだけでは不満です」となれば、交換は不成立です。もしくは相手からさらなる交換条件を持ち掛けられます。

 

「では軽トラックと30万円相当の腕時計はいかがでしょうか」

 

実際にはあまりこのような交換例はないかもしれませんが、物々交換というのはこういうものです。1対1の交換だったり、2対1の交換だったり、もしくは1つの物に対し物プラスお金で交換するというケースもあるでしょう。

 

物々交換のイメージが固まった上で、事例を見てみましょう。

 

ごきょうだいは2棟のアパートをそれぞれ半分ずつ共有している状態でした。この半分ずつを交換すればいいのです。

 

仮にアパートをAアパートとBアパートとしましょう。Aアパートのお兄さんの持分と、Bアパートの相談者さんの持分を交換すれば、事態は丸く収まりそうです。Aアパートは相談者さんの単独所有になりますから、引き続きアパート経営を続ければいいわけです。

 

一方のBアパートはお兄さんの単独所有になるので、全体売却して会社の資金に回すことができます。

 

[図表]持分交換で円満解決

 

この話は次回に続きます。

相続の落とし穴! 共有名義不動産

相続の落とし穴! 共有名義不動産

松原 昌洙

合同フォレスト

相続後に誰にでも起こり得る不動産のトラブルを回避せよ! 相続後に共有名義不動産を持った方、これから持つ可能性のある方へ、実際のトラブル事例と、その解決方法を大公開! 最初は些細な問題でも、時間の経過とともにみる…

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