不動産を売りたい兄、持ち続けたい弟
収益不動産に関する最後の事例として、持分を交換した珍しいケースを紹介しましょう。
「父の遺したアパート2棟を、遺産分割協議により兄と弟である私で相続し、各不動産ごと2分の1ずつの共有持分として登記しています10年ほどこの関係が続いていたのですが、このほど兄から、会社の資金繰りのため、私との持分を合わせて、アパート1棟を丸ごと売却したいという申し入れがありました。私としては収益不動産としてアパートを持ち続けたいと考えています。何か良い解決方法はないでしょうか」
お兄さんは早急にまとまったお金が欲しかったようで、持分売却よりも高値が付き、取り分の増える全体売却を相談者さんに持ち掛けました。
共有名義不動産を全体売却するには、当然共有者全員の同意が必要です。しかし、相談者さんとしてはアパートを持ち続けたい意向で、両者の意見は対立しています。ごきょうだいの関係を崩すことなく、両共有者の希望を満たす方法は、果たしてあるのでしょうか。
今回は不動産を2棟共有していることがポイントです。こういったケースの場合、持分の交換が有効です。
2棟のアパートをそれぞれ半分ずつ共有している状態に
持分の交換、つまりは物々交換になります。「あなたの自家用車と、私の軽トラックを交換しましょう」ここであなたがイエスと答えれば物々交換は成立です。「いやいや私の自家用車の方が価値は高いのだから、軽トラックだけでは不満です」となれば、交換は不成立です。もしくは相手からさらなる交換条件を持ち掛けられます。
「では軽トラックと30万円相当の腕時計はいかがでしょうか」
実際にはあまりこのような交換例はないかもしれませんが、物々交換というのはこういうものです。1対1の交換だったり、2対1の交換だったり、もしくは1つの物に対し物プラスお金で交換するというケースもあるでしょう。
物々交換のイメージが固まった上で、事例を見てみましょう。
ごきょうだいは2棟のアパートをそれぞれ半分ずつ共有している状態でした。この半分ずつを交換すればいいのです。
仮にアパートをAアパートとBアパートとしましょう。Aアパートのお兄さんの持分と、Bアパートの相談者さんの持分を交換すれば、事態は丸く収まりそうです。Aアパートは相談者さんの単独所有になりますから、引き続きアパート経営を続ければいいわけです。
一方のBアパートはお兄さんの単独所有になるので、全体売却して会社の資金に回すことができます。
[図表]持分交換で円満解決
この話は次回に続きます。