遺産分割協議で争点となる、被相続人の「特別扱い」
相続した共有名義不動産を手放したい方が相談に来られたとき、次の2つの質問をします。
まず1つめが「遺言書はありませんか」という質問です。
相続直後の相談には特に慎重にならないといけません。共有関係になっていたつもりが、実は遺言書があって相談者さんには持分がなかった、といったケースが時に発生します。売却した後に判明したら大ごとなので、事前に忘れず確認を取ります。
2つめが「特別受益はありませんか」という質問です。
特別受益は、共有関係を解消する際だけでなく、相続時の遺産分割協議でも大きな争点となる項目の1つです。難しい言葉のように思えますが、質問の真意は至ってシンプルです。被相続人から「特別扱い」されたことがないかを尋ねています。
例えば相続とは別に、被相続人から財産を譲り受けていたり、婚姻や生計の資本として贈与を受けていると、特別受益と見なされることがあります。もし相続人の中に特別受益を得ている人がいたら、法定相続分のまま遺産を受け継ぐと不公平が生じてしまいます。
民法が設けている「特別受益」に関するルール
そこで民法では特別受益に関する次のようなルールを設けています。
まず、相続時に有している財産の評価額に、特別受益と見なされた贈与の価額を加え、この全体を相続財産とし、法定相続通りに分けます。そして特別受益を受けていた人は、法定相続分から特別受益分を控除したものが最終的な取得分となるのです。あくまで遺言書がない場合の、法律にのっとった分配です。
計算がやや複雑にも感じられるので、次回、実際の事例を通して解説していきましょう。