欧州中央銀行(ECB)は6月14日の理事会で、量的緩和を年内にも終了する方針を決定した。超金融緩和政策の出口へ、大きな一歩を踏み出したと言える。一方で、金利に関しては、2019年夏までは据え置きの見通しが、理事会後の声明文で発表された。これらにより、実際にマーケットはどのような動きを示したのか? 前日13日のFRB発表の影響とも絡めながら解説する。

「金利は据え置き」を受け、中期金利が小幅低下

13日米FRBが今年2回目の利上げを決定したことに続き、欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、量的緩和を段階的に今年10月から月間150億ユーロに縮小し、年末にインフレ指標が理事会の中期インフレ見通しと相違ない場合は、債券買い入れのプログラムを終了することを決定した。

 

ただし、債券買い入れプログラムを終了させても、早急で急激な政策引き締めには動かない方針であることを示し、市場の過剰反応を抑制する姿勢を見せた。また、理事会後の声明文で、インフレ動向がECBの予想に反しなければ、2019年夏までを目処に、政策金利は、現行の水準にとどまるとの見通しを示した。

 

 

市場はこれまで2019年6月までに0.10%程度の小幅なECBによる最初の利上げを織り込んでいたため、この発表を受け、1-2年の期間の金利を中心に中期ゾーンで小幅低下した。

 

次期総裁と見られるワイトマン独連銀総裁などのタカ派的な発言が相次いでいたことから、市場は警戒感を強めていたが、今回の理事会では、量的緩和政策についてはややタカ派的な姿勢が見られたものの、金利については来年まで現行水準を保つというむしろハト派的な姿勢が示され、全体的にバランスのとられる形となった。

超金融緩和の出口へ踏み出すも、市場の混乱は回避

理事会後の記者会見でドラギ総裁は、先行きの不透明性を強調し、リスクは増大していると警告している。ドラギ総裁のハト派的な強い意向が働いたものと見られ、市場の過剰反応を抑えることに繋がるのではないだろうか。

 

実際に、ECBは最新の経済予想で、ユーロ圏のインフレ率の見通しに関して、今年と来年のインフレ率はともに1.7%になるとし、従来の1.4%から上方修正している。原油高や為替相場の動向を受け輸入価格が上昇し、これが徐々に消費者物価に反映され始めていることが主因と見られる。

 

反面、今年のユーロ圏の成長率見通しは2018年が2.1%になるとし、従来の2.4%から下方修正した。ユーロ圏では、保護主義を巡る懸念などが経済成長に対する重しとなり始めており、これがECBの成長率見通しを下方修正に繋がった模様である。

 

また、貿易摩擦による関税引き上げ合戦が通商面での懸念を増大させており、これまで好調だった輸出需要も軟化する兆候が出てきている。加えて、イタリアやスペインは新政権の行方が心許ない。こうした背景からユーロ圏経済の先行きには、不透明感が漂っている。なお、イタリア銀行(中央銀行)総裁を務めたこともあるドラギ総裁は、イタリアの問題は地域的なもので、政権交代は通常のマーケットイベントに過ぎず、この問題はユーロ圏全体には影響を与えないと指摘した。

 

いずれにしろ、今回の決定でECBは、リーマンショック後の超金融緩和政策の出口への大きな一歩を踏み出し、市場にも混乱を招くこともなかった点は評価されるべきだろう。
なお、ECBの決定を受け、金利は小幅ながら低下、外為市場ではユーロ/ドル<EUR=EBS>が1.15ドル台まで下落した。当面、米国金利の上昇が際立つ格好となり、米ドルの堅調さに繋がるだろう。

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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