物価と雇用は、FRBの目標に限りなく近づいた!?
米連邦準備理事会(FRB)は6月13日、連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、1.75~2.00%に引き上げることを決定した。利上げ自体は、市場の予想通りだが、FOMCが示す今後の見通しの中で、年内の利上げがあと2回、すなわち年内で合計4回の利上げを示唆した点に注目が集まった。
FRBは、FOMC後に発表した声明の中で、労働市場が継続的に引き締まり、経済活動は堅調に推移と評価している。低下し続けている米国の失業率は3.8%と17年ぶりの低水準、雇用の伸びは2018年に入ってからも、ここ数カ月堅調。ちなみに、米国で失業者数(635万人)よりも求人件数(670万件)のほうが多いという現象は、歴史上初めてのこと。家計部門では消費支出の伸びが上向いており、企業の設備投資も、堅調な伸びを示している。
また、インフレ率はFRBがターゲットとしている2%に近づいたと判断されたようだ。FOMCのコンセンサスでは物価水準が2.1%と示されている。声明文では、あえて「FOMCは与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す」と述べているが、FRBの2大関心事である物価と雇用に関して、完全雇用の実現と物価の2%水準での安定という目標に限りなく近づいたという見方をしているのであろう。
10年米国債は3.50%程度まで上昇?
米国経済が今回の成長局面に入るまで、リーマン・ショックから9年。FRBが2015年12月に慎重に始めた利上げは、数えて7回目。政策金利の誘導目標はゼロ金利から1.75~2.00%。金利の絶対水準を考えると、インフレ率2%を前提とするなら、これで中立になったわけだ。実際、声明文からは、「景気に配慮して金利を低水準に留める」という表現は削除された。
今後の利上げに関してはどうであろうか。腰の強い経済状態、歴史的に低い失業率水準、じわじわと強まる物価上昇圧力…という状況の下、景気を過熱させないために、どこまで、政策金利を上げていくかとテーマは非常に難しい。市場では、金利を上げすぎて、景気を殺してしまうオーバーキルを懸念する見方も根強く、FRBの視点とはややギャップがある状態だ。
筆者は、以前から年内4回の利上げは十分に可能性があると予想してきた。景気に対する見方も何かというと腰折れ懸念を口にする市場よりは、強気に見てきた。今後も、米国経済の腰がしっかりとした状況は、少なくとも年内は継続すると予想している。そうなると、金利に関して、利回り曲線の平坦化は一段と進むが、長期金利より短期金利が高くなる「逆イールド」化する可能性は低いだろう。
この局面では、長期金利も、短期金利の上昇に引きずられて10年米国債で3.50%程度までは上昇する圧力に晒される展開を想定しておくべきだろう。また、この場合、為替では、米ドルが買われやすい状況を頭に置いて行動すべきと考える。株式市場も、トランプ政権が打ち出した規制緩和と税制変更により、企業業績の上ぶれは期待でき、恩恵を受けやすい中小型株を中心に物色される可能性は高まることが予測される。
リスクは「米中・米欧間の貿易摩擦がどう展開するか」、そして「米ドル高で一部売りを浴びせられている新興国市場が安定する」の2つである。後者については、次稿で述べる。