今回は、共有名義不動産のトラブルのうち、共有者がアパートの収益を分配しないという事例を紹介します。※本連載では、株式会社中央プロパティー代表取締役社長で、住宅ローンアドバイザー、相続アドバイザーでもある松原昌洙氏の著書、『相続の落とし穴! 共有名義不動産』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、「共有名義不動産」のトラブル対策を事例を交えて見ていきましょう。

管理を任せている姉から、一度も家賃が振り込まれない

まずはよくある相談として「共有者なのに家賃がもらえていない」という事例があります。

 

「親が亡くなり収益不動産のアパートを姉と私の2人で相続しました。持分は均等に2分の1ずつです。集金や管理といった実務はアパートの近くに住んでいる姉が担当することで合意しているのですが・・・」

 

「これまでアパートの家賃が私に振り込まれたことは一度もありません。全ての管理を姉に任せているので偉そうなことは言えないですが、持分のある私にも家賃収入を得る権利はあるはずです」

 

「以前家賃の分配について姉に尋ねたときは『お前は知らなくていいの』と一蹴されお手上げ状態でした」

 

「このまま家賃が入らないのでは持分を保有している意味がありません。いつかは私の子どもたちへ相続されます。そのときさらに事態がややこしくなることも考えられるのです。今のうちに持分を手放すことはできないでしょうか」

共有者に家賃収入を分配しないのは「不法行為」

この事例では相続の際、「誰が管理するか」を話し合ってはいるものの、家賃分配に関しては具体的な取り決めをしなかったことが災いしました。

 

修繕費などの出費も含め、アパートに関わる実務は全てお姉さんが担当していますが、損益や収支に関する決算報告書は相談者さんに一切共有されていないという状況です。「いくら収入があって」「いくらの出費があって」「いくら手元に残っているのか」を共有者に開示しないのは不信感を募らせてしまいます。

 

まして共有不動産でありながら、共有者に家賃収入を一切分配しないのは不法行為に当たります。

 

このトラブル、解決への筋道はあらかた決まっています。相談者さんの願いは持分を手放すことですから、まずは他の共有者に持分を買い取る意思があるかどうかを確認します。その結果、お姉さんには買い取りの意思がないことが分かりました。

 

次回は、この問題の解決方法について見ていきましょう。

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