1週間程度の「購入申込み期間」が設定され・・・
前回の続きです。
このように、アメリカでは不動産に関するさまざまな情報がオープンになっています。「アメリカの不動産取引は世界トップクラスの透明性を確保している」といわれるゆえんです。実際の取引のプロセスも、アメリカは日本以上にオープンです。
日本の場合、1つの不動産業者を介して売り主に購入を打診して、価格交渉を行います。すでに希望する物件に先約があった場合には、その先約の成約が頓挫(とんざ)することを祈るほかありません。
しかし、アメリカの場合、物件が売りに出されると1週間程度の”オファー(買付)=購入申込みの期間”が設定されます。希望者はその期間内に、”オファーシート”とも呼ばれる購入希望契約書(Purchase Contract)に希望の購入金額や希望する登記日(引渡日)、支払いの条件などの必要事項を記載したうえで、エージェント(不動産業者)を通じて売り主にオファーを出すわけです。つまり、日本のように”早い者勝ち”ではなく、入札方式に近い交渉システムが導入されているわけです。これもフェアな取引をさせるための方法です。
購入希望契約書に「購入条件」を記入
購入希望契約書には「私は高く買いますので、ローン条項をつけさせてください」「安くしてくれないと買えないけど、明日にでも決済できます」「家具もまとめて買い取ります」など、希望者がそれぞれの条件を記入していきます。
なお、ローン条項とは、「ローンの審査が下りなければ(承認されなければ)ペナルティなく購入希望を取り下げられる」というもので、売り主にとっては、基本的に好ましくない条件です。多くの売り主が歓迎するキャッシュ(現金)での購入を希望する場合には、銀行に英文の残高証明書を発行してもらって、購入希望契約書に添付することになります。
余談ですが、3カ月前に発行をした残高証明書を提出した際に、「直近」のものを再提出してほしいと依頼をされたことがあります。どうやらアメリカの人から見れば「そんな大金を3カ月も銀行の普通預金に寝かせておくなんて信じられない」のだそうです。預貯金が大好きな日本人マインドは理解されないようです。
こうしたオファーに対して、売り主が価格・条件ともに了承すれば交渉成立となります。複数のオファーを精査して売り主が交渉相手を選ぶため、総じて相場と同等ないしは高い値段での売買が成立する傾向にあります。日本のように「値切り前提」の交渉は一般的ではありません。