前回に引き続き、助成金活用の際の「注意点」を見ていきましょう。今回は、申請のタイミング等についても併せて説明します。

一度制度を設けると、法律上「廃止できない」場合も

前回の続きです。

 

●注意点2 制度を設けると廃止できないものもある

 

助成金のなかには新しい制度をつくった場合に受給できるものがあります。この場合、受給できるのは要件を満たした一度きりですが、制度自体はその後も残るので運用していかなければなりません。

 

例えば「両立支援等助成金」のメニューのなかには「育児休業等支援コース」というものがあります。対象となる社員が3カ月以上の育児休業を取得し、原職に復帰後6カ月以上継続雇用するなどの要件を満たせば助成金を受給できます。

 

社員にとっては育休が取れて原職への復帰もできるなど、メリットのある制度に思えますが、この制度は一度つくると法律上廃止できません。ですから、「助成金を受給したものの、会社の負担が大きいので制度を廃止しよう」ということはできないのです。

 

この場合の解決策は、目的を持って助成金の申請を行うことです。女性の場合は結婚や出産といった人生のライフイベントで働き方を見直さざるを得ないケースがあります。そうした女性社員にも安心して働いてもらえる職場環境を提供すべく、計画的に制度を設計して運用すれば廃止を検討する必要もありません。

 

助成金はあくまで手段。目的もなく、手あたり次第に申請すればいいわけではないのです。

手続きのタイミングを逃さないように注意!

●注意点3 申請のタイミングを逃すと受給し損ねる

 

助成金には、年度初めに前もって書類の手続きが必要なものがあります。

 

例えば2018年の税制改正で廃止となった「雇用促進税制」。これは適用年度中に雇用者数を5人以上(中小企業などは2人以上)、かつ10%以上増加させるなどの要件を満たした場合、法人税(個人事業主の場合は所得税)の税額控除の適用が受けられる制度でした。

 

この助成金を受給するには、事業年度が始まって2カ月以内に、採用人数の予定をまとめた「雇用促進計画」をハローワークに提出する必要がありました。提出期限を一日でも過ぎると受給できません。

 

従って、仮に年度の半ばや後半に複数人を雇用し、その後にこの制度について知ったとしても手遅れです。情報不足から本来受けられる公的支援を逃してしまうのは非常にもったいないことです。

 

この場合の解決策は、税理士と社労士をうまく使いこなすこと。経営指導を行う税理士と、書類を作成して関係機関に提出する社労士との連携を密に取り、士業分断の不利益を最小限にするのです。 

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2018年5月28日刊行の書籍『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

寺田 慎也

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者は公的支援をフル活用して業績を向上させよ! 税理士・社労士資格を有する経営コンサルタントが豊富な実例をもとにわかりやすく解説。

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