助成金が必要な中小企業ほど、情報が手に入りづらい
一方、助成金を使ううえで知っておくべき注意点もあります。
●注意点1「助成金格差」が生じている
助成金はその時々の社会情勢に合わせて変化します。従って数年前までは対象外だったケースがいつの間にか対象となっていることもあり得ます。
助成金は労務の専門家である社会保険労務士の業務範囲です。社労士と顧問契約をしていれば、助成金の情報はある程度手に入れることができるでしょう。
しかしながら、全国社会保険労務士会連合会が2014年に調査したアンケート結果によると、社労士を利用している企業はおよそ半数の56・4%に留まっています(「社労士のニーズに関する企業向け調査結果」)。
調査対象には大手企業も相当数含まれていますから、中小企業に限定して言えば数値はもっと低いはずです。私の実感としては4割程度といったところでしょうか。接点のないおよそ6割の中小企業は自ら積極的に探しにいかない限り、情報を手に入れることができないと言えます。
さらに、1000人を超える企業では社内に勤務社労士がいる割合が半数を超えるのに対し、それ以下の企業ではいないところが7割を超えています。社内に社労士がいるほうが情報を手に入れる機会が増えるのは言うまでもありません。つまり、助成金の恩恵が真っ先に行き届くべき小さな企業ほど、反対にその情報が手に入りづらい状況になっているのです。
メディアの記事、商工会議所の会合等から情報入手を
このように、中小企業と大企業との間には、「採用条件格差」「労働条件格差」「情報格差」の3つに加えて、「助成金格差」まで生じています。
このハンディキャップを埋めるためにも、中小企業経営者は助成金について「知る」努力をしなければなりません。例えば2018年1月14日付けの日本経済新聞に「生産性向上で賃上げ、中小企業に助成金」という小さな見出しが躍りました。設備投資の結果生み出した利益を賃上げなどに回した場合、投資額に応じて数百万円の助成金がもらえるという内容です。
設備投資を考えている経営者がこの記事を見れば、助成金の存在を知り、「自社も受給対象になるかもしれない」という発想に転換できます。知ることで、次のアクションにつなげられるのです。
各種メディアの記事のほか、商工会議所や中小企業団体などの会合、各種勉強会などを通じて助成金の情報を仕入れることは可能です。
この話は次回に続きます。