前回に引き続き、助成金活用の際の「注意点」を見ていきましょう。今回は、コスト負担に関する注意点も併せて説明します。

受給までの準備に費やしたコストは「自社負担」

前回の続きです。

 

●注意点4 コスト負担が先行する

 

返済不要の資金が手に入るのは大きなメリットですが、助成金を受け取れるタイミングは”支給要件を満たしたあと”になります。そのため、受給までの準備に費やしたコストは自社で負担しなければなりません。

 

例えば、今後の連載で紹介する「キャリアアップ助成金」では、非正規労働者として6カ月以上雇用したのち、正社員に転換後、さらに6カ月分の賃金を支払った翌日から申請が可能となります。

 

この時点ですでに雇用から1年経っているうえ、審査にも2~6カ月はかかります。いずれ助成金が入るとしても、それまでの人件費は確保しておく必要があるのです。

「目的」と「手段」を明確にすることが重要

また、支給要件を満たすためには非正規雇用の実績のほか、キャリアアップ計画や就業規則等の改定をしなければなりません。自社負担で準備を進めたものの、雇用した従業員が要件を満たす前に辞めてしまった場合、助成金の支給はなし。それまでに費やした準備のコスト負担だけが会社に残ることになります。

 

この場合の解決策は、連載第7回の注意点2と同じように、目的と手段を明確にすることです。目的を労働環境の改善に置き、その手段として助成金を使うという意識を持てば、コスト負担が先行することはデメリットではなくなります。 

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2018年5月28日刊行の書籍『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

寺田 慎也

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者は公的支援をフル活用して業績を向上させよ! 税理士・社労士資格を有する経営コンサルタントが豊富な実例をもとにわかりやすく解説。

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