前回は、助成金の活用を「社労士・税理士」任せにするリスクについて説明しました。今回は、助成金受給のための「社労士・税理士」の上手な使い方を見ていきましょう。

助成金フル活用のカギを握る「税理士」

では中小企業は助成金をどうやって活用すればいいのか。そのカギは、実は社労士以上に税理士が握っています。

 

助成金がうまく活用できない原因として、経営判断の際に、助成金の情報が不足しているという点がありました。ということは、助成金の専門家である社労士が経営判断の際に同席できれば、経営者は「税理士が提供する会計の情報」と「社労士が提供する助成金の情報」の両方を考慮した意思決定が可能です。もちろん費用は伴いますが、助成金を活用することのメリットのほうが大きいといえます。

 

しかし現実的には、経営に関与していない社労士がその場に同席するのは難しいでしょう。そこで重要なのは、税理士が社労士と連携し、積極的に助成金の情報を集め顧問先に伝えるよう依頼することです。そうすることで中小企業経営者は雇用対策や経営投資に必要な情報を一元管理し、一歩も二歩も踏み込んだ対策が可能です。

 

例えば社員を募集する際、給与額は応募者を集めるための大きな要因です。採用後に助成金が受給できることを知っていれば、募集時の給与額を増やして競合と差別化するきっかけにできるでしょう。さらに採用後も各種の助成金を活用すれば、教育制度のインフラも構築できます。

 

このように中小企業が受給の機会損失を解消し、助成金を使いながら人材投資をするためにも、税理士と社労士の連携が不可欠なのです。

双方でやり取りさせれば、経営者は労力を割く必要なし

ただし、税理士と社労士の間に良好な関係性ができていない場合、経営者が間に立たなければならないというケースも考えられます。ですから、社労士は顧問税理士が懇意にしている人を紹介してもらいましょう。そして顧問税理士に調整役になってもらい、助成金の情報を社労士と共有して、必要に応じて経営者にバックしてもらうのです。

 

助成金の申請時に必要な書類も税理士と社労士でやり取りをしてもらえば、経営者が間に挟まれて無駄な労力を割く必要もありません。

 

ある程度の規模の税理士事務所であれば、パートナーとなる社労士がいるものです。せっかく経営に深く関与している顧問税理士がいるわけですから、そのネットワークをフル活用しない手はありません。顧問料を支払いながら、実務は試算表の作成と税務申告のみ。それが当たり前と思ってはいけません。

 

仮に顧問税理士が社労士との連携を拒んだり、助成金は専門外だという理由で知ろうとしてくれなかったりする場合は、他の税理士に切り替えるのも一つの手段です。あるいは税理士と社労士の両方が在籍している税理士・社労士事務所を探すのもいいでしょう。

 

中小企業の場合、先代からお世話になっている古株の顧問税理士にお願いしている場合が少なくありません。しかし税理士に求められている指導内容は時代とともに変化・拡大しています。現在の経営環境を踏まえた適切なアドバイスができる、新しい感覚と能力を持った税理士かどうかを見極めることが大切です。 

本連載は、2018年5月28日刊行の書籍『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

寺田 慎也

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者は公的支援をフル活用して業績を向上させよ! 税理士・社労士資格を有する経営コンサルタントが豊富な実例をもとにわかりやすく解説。

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