前回は、マイナンバー制度で相続税の「税務調査」はどのように変わるのかを取り上げました。今回は、マイナンバー制度の導入で相続人側にどんなメリットがあるのかを見ていきます。

税務署は、調査にかかる膨大な手間と時間が省ける

今現在は時間も手間も非常にかかっている「名寄せ」(支店の1つに照会して、日本全国すべての本支店にある口座をひもづけること)ですが、マイナンバーが導入されれば、一連の作業が大幅に簡略化され、銀行の負担もかなり減るでしょう。

 

また、マイナンバーを活用した「名寄せ」が可能になれば、苗字や住所が変わっても個人の特定には支障を来さないようになります。もちろん、漢字の入力ミスによる漏れも防げます。マイナンバーは基本的に、一生を通じて変わることがないからです。

 

税務調査の際、かつては「どこで働いていましたか?」ですとか、「引っ越ししたことはありますか?」などといった質問で遠方にある口座をあぶりだしていましたが、そういった質問の必要もなくなります。

 

調査にかかっていた膨大な手間と時間が省けるので、相続税の税務調査の件数自体も増加するのではないかといわれています。

 

ただ、マイナンバーに関してはいまだ浸透しているとはいい難い状況です。また、マイナンバーを使用する際には本人確認の書類が必要なのですが、その書類の組み合わせがまた複雑なので、その確認の手間で結局しばらくは現場が混乱すると予想されます。

相続人は、忘れていた口座の把握、各種申請が簡便に

マイナンバーは何も、行政側だけにうまみのある制度ではありません。相続人側にもちゃんとメリットがあります。

 

これまでは、たとえば遠隔地にあるなど、被相続人も存在を忘れているような口座の把握はなかなか難しかったのですが、マイナンバーによって、これまでよりも自分の口座を把握しやすくなりました。

 

また、これまでは役所で何らかの手続きをする際、必要書類等の申請を各窓口で行わなければなりませんでしたが、マイナンバー導入後は、1つの窓口で済むケースが増えています。

本連載は、2017年12月刊行の書籍『相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

岡野 雄志

幻冬舎メディアコンサルティング

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