前回は、国税不服申し立てで「勝つ」確率を少しでも高くすることができるかを見ていきました。今回は、相続税の「生前対策」のポイントを取り上げます。

「税理士費用」も相続税対策になる!?

いざ相続が発生したその時になって慌てて相続税の対策をするのは、あまり賢いやり方とはいえません。生前から税理士に依頼して財産を把握し、対策しておけば、相続発生時にも慌てることなく対応できるでしょう。また、税理士への報酬金を前もって相続財産から払っておけば、相続税対策にもなります。

 

「相続税がかかるかわからない」という人はまず、自分の相続財産を試算して、相続税がかかるかどうかを把握しておいたほうがよいでしょう。統計上では、相続人は平均3人です。つまり、平均基礎控除額は4,800万円です。明らかに相続財産が基礎控除額を下回りそうな場合、相続税はかからないので、何も心配する必要はありません。

 

ただ、「特例(「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」など)を使えば基礎控除の枠内におさまる」という場合には、たとえ納税額がゼロでも申告が必要です。

「遺言書」作成の代わりに「信託」制度も活用できる

相続税の生前対策には、大きく分けて2種類あります。「節税のための生前対策」と「死後のトラブル(争続)防止のための生前対策」です。

 

「節税のための生前対策」には、不動産の購入や、贈与が当てはまります。

 

「死後のトラブル(争続)防止のための生前対策」としては、「遺言」や、今流行りの「信託」などがあります。

 

「遺言」は、被相続人が自分の意思を相続人に伝えるという意味では最良の方法です。本来相続財産は、遺産分割協議によって決めるのが理想的です。しかし、被相続人に「相続人以外に財産を残したい」とか「特定の相続人には財産を配分したくない」など、特別の要望がある場合には、遺言を活用するのが有効なのです。

 

遺言書の種類や作り方は法律で厳格に定められているため、少しでもその様式から外れている場合には法的効力を生じません。かえって争いの種になってしまうこともあるため、よく注意して作成する必要があります。

 

一方「信託」とは何かというと、委託者(この場合は被相続人)が信託行為(たとえば、信託契約や遺言信託)によって、信頼できる受託者(相続人や信託銀行など)に財産を移転する制度のことです。受託者は委託者が設定した信託目的に従って、その財産を管理運用します。簡単にいえば、財産の管理運用を信頼できる人や専門の機関に任せるしくみ、といったところでしょうか。

 

近年では、相続税が発生しないような中流層にも使い勝手のよい制度として、「家族信託」が人気です。家族信託の場合には、財産の管理を任せる人を家族で決めて、財産の承継に活用します。

本連載は、2017年12月刊行の書籍『相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

岡野 雄志

幻冬舎メディアコンサルティング

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