理事のモチベーションが、建物寿命に大きく影響する?
前回より、築30〜35年に検討される「3回目の大規模修繕工事」について説明しています。建物の生涯でただ一度だけの工事検討項目も多いため、計画立案時から修繕コンサルタントに依頼することを検討する必要があるでしょう。
次に考慮したいのは、管理組合と理事会の課題です。大規模修繕工事の当事者である管理組合と理事会が「元気である」ことが絶対不可欠となってきます。
新築から30年が経過すれば、当初からの管理組合メンバーは嫌でも高齢になっています。工事などやりたくない、面倒くさいといった意識が管理組合で多くを占めるようになってしまうと、マンションそのものも老いてしまいます。
逆に建物は築30年を超えても、それぞれの理事がまるでライフワークのように理事会に参加し、元気で前向きに運営するといった状態であれば、大規模修繕工事をきっかけとして、マンションをさらに魅力的なものへと成長させていけるものです。
生活に基づく「住み心地」がマンションの資産価値に…
マンションの資産価値に注目すれば、この時期のマンションでは生活価値の占める割合がたいへん大きくなっているのが普通です。それは「暮らしやすい」「住み心地がよい」といった生活価値を支え演出するのが建物や敷地といった物件価値の役割となっていくからです。
住民の生活と建物、敷地が一体となり、それらが地域をはじめ周辺外部に与える印象が功を奏し、若い世代への住み替えも比較的うまくいっているケースも少なくありません。これはマンションの成長といっても良いものでしょう。ただし、その状態は単なる偶然やある日急にできあがったものでなく、これまでの理事会の努力のたまものであることは確かです。
大規模修繕工事は十数年に一度のことですが、日常的な保守管理が継続するその間の時間、理事会が管理組合全体を巻き込んでマンションの生活価値育成にどれだけ貢献してきたかが現れてくる機会でもあるのです。理事になって3回目の大規模修繕計画に携わることになるのなら、住民の老いも若きも巻き込んで、マンションの歴史をさらに先の時間へとつなげることにチャレンジしていってください。