地震による死者の10~15%は、室内家具の転倒が原因
近年の地震時において多くの犠牲者が発生しました。脆弱な建物の崩壊による死亡者は多数おり、建物の根本的な強化は進めていく必要がありますが、一方において地震による死者の10~15%は室内家具の転倒によるものとなっています。
負傷者数においては家具転倒による比率はより大きいものと推定されます。建物の崩壊は免れても、室内家具の転倒で死傷してしまうことを防ぐには家具の固定が大変重要な耐震対策であることは明確です。高層の建物になった場合、その比率は増大します。私どもは大規模修繕時において各住民様の地震時の安全を確保する手法のなかで、室内家具の転倒防止対策を管理組合中心に行うようお勧めします。
家具の転倒防止は家具による圧死を防ぐとともに、避難ルートの確保や地震後の生活への影響が非常に大きいことなど、コストパフォーマンスの高い対策と考えお勧めいたします。
切っても切れない関係の「防災」と「コミュニティ」
建物は壊れることを理解したうえで安全を確保する手法は少なくありません。たとえば、火災を発生させないような対策、落下物による人的被害の防止、建物の下敷になる可能性のある部位の部分是正、部屋に閉じ込められないような玄関ドアの改修、設備機器の耐震化、エレベーターの閉じ込め防止装備、緊急防災品の保管などです。
さらに忘れてはならないものに、住民同士の助け合い体制があります。それを確立するためには、日常的なコミュニケーションを積み重ねるほかありません。おわかりのように、それは大規模修繕工事などを通じて住民間の関係強化や情報共有を図ることから生まれてきます。
また、防災を考えることは安全を考えるということでもあります。地震防災だけでなく、そこには火災防災、侵入防災、衛生防災など多数の項目が関連してきます。マクロな目で防災を総合的にとらえて対応することが大切であり、さらにそれらすべての基本にあるのが住民の協力という要素です。
真の「防災」と「コミュニティ」は、同じ目的を持つという点から切っても切れない関係にあるともいえます。そしてそれもまた、理事会がリードするマンションの生活価値向上の取り組みの結果から生まれてくるものにほかならないのです。
[図表1]大規模修繕工事の全体工程モデル①
[図表2]大規模修繕工事の全体工程モデル②
[図表3]大規模修繕工事の全体工程モデル③