今回は、北朝鮮を例に「地政学リスク」を逆手に取った株式投資の方法を紹介します。※本連載では、経済評論家・杉村富生氏の著書、『東京オリンピックまであと2年 新成長株で勝負せよ!』(すばる舎)の中から一部を抜粋し、東京オリンピックまであと2年となった今、投資で勝つための「日本株を取り巻く現状」を解説していきます。

リスクによって安値をつけた大型優良株

北朝鮮は、2016年にも9月5日にミサイルを3発発射、9月9日には5回目の核実験を断行した。これにより、日経平均株価は下げに転じたが、核実験後、5営業日後には反発に転じている。

 

2017年4月と8〜9月のケースでも、北朝鮮が何をしてくるか分からないという不安心理が株価を急落させたが、実際に事が起こると「悪材料出尽くし」とばかりに、株価は戻りを見せた。いたちごっこである。

 

しかし、9月3日に日米韓はまたしても大きな衝撃を受ける。北朝鮮が、今度は大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験を強行したのだ。爆発規模は過去最大と推測され、小野寺五典防衛大臣は「約160キロトン」であるとの見通しを述べた。これは、広島に投下された原子爆弾の10倍以上に相当する。

 

翌日の9月4日は月曜日だったが、日経平均株価は寄り付きから下げ、前日比183円安で引けた。さらに、金曜日の8日には一段安となり、安値を更新した。これは9日の北朝鮮建国記念日を控え、投資家の不安心理が増幅したことによる。

 

結局、この週は始値1万9615円→終値1万9274円で、前週比416円安の大きな下げとなった。個別では、みずほフィナンシャルグループ(8411)が185.4円の年初来安値をつけた。主軸株は有事に弱い。

 

しかし、この水準の年間予想配当利回りは4.0%であり、冷静に考えてみれば買いを入れられる水準に達している。2017年9月8日には、配当妙味の増した優良大型株がゴロゴロ出現した。こんな場合は断固、買いになる。

 

この日の年間予想配当利回りは、大和証券グループ本社(8601)が4.4%、積水ハウス(1928)が4.1%、キヤノン(7751)が同じく4.1%、NTTドコモ(9437)が4.0%、日本たばこ産業(2914)が3.8%といった具合である。

長期投資は優良銘柄が大きく下げた局面を徹底的に狙う

北朝鮮が8月29日の弾道ミサイル発射に続き、9月3日に6回目の核実験を強行したことにより、地政学リスクが日本株に暗い影を落とした。しかし、パニック的な売りを出す個人が続出するなか、長期・逆張りに徹した海外勢は打診的な買いを入れたといわれている。

 

結局、北朝鮮は9月9日の北朝鮮建国記念日に何もしなかった。これが、先物を中心とした買い戻しにつながり、休み明けの9月11日以降、日経平均株価は急反騰に転じた。13日の終値は1万9865円まで上昇、これは8日の終値より591円高い水準であり、8月8日以来、約1カ月ぶりの高値となった。なお、9月第2週は外国人が先物を1兆2400億円買い越した。これは売りの買い戻しだろう。

 

こうして見ると、北朝鮮リスクはある意味、「ピンチはチャンス!」といえるのではないか。「下げたところは拾っていきたい」と考える投資家は多く、実際、長期スタンスの外国人は優良株の下値を買い進めている、という。

 

もちろん、有事は歓迎されるべき事柄ではないが、北朝鮮リスクは相場のボラティリティ(変動率)を高め、結果的に投資チャンスが生まれる。

 

当然、相場が思惑と逆に動けば大ヤケドを負うことになるが、短期勝負の場合は、ボラティリティの極端に低い膠着相場に比べ、投資妙味が増すことになる。

 

前書でも述べたが、投資で成功するためには、「短期・順張り」と「長期・逆張り」を併用することが望ましい。短期・順張りでは、強い銘柄(上昇している銘柄)を徹底的に攻め、長期・逆張りでは内容のいい銘柄が大きく下げた局面を徹底的に拾う。

 

例えば、日本電産(6594)も北朝鮮が核実験を実施した余波を受け、2017年9月6日に1万1955円まで売られた。だが、8日にはほぼ安値引けの日経平均株価に対し、逆行高の1万2315円で引けている。

 

このようなケースでは、翌週の寄り値が高く始まれば、まず下がらない。実際、9月13日には1万3660円で引けている。11日の終値1万2835円で買っても、この間825円の値幅が取れたことになる。100株の買いでも、8万2500円の利益(取引コストを除く)である。

 

[図表]日本電産(6594)の日足

本連載は、杉村富生氏の著書『東京オリンピックまであと2年 新成長株で勝負せよ!』(すばる舎)から一部を抜粋したものです。掲載している情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はご自分の判断で行ってください。本連載を利用したことによるいかなる損害などについても、著者、出版社および幻冬舎グループはその責を負いません。

東京オリンピックまであと2年 新成長株で勝負せよ!

東京オリンピックまであと2年 新成長株で勝負せよ!

杉村 富生

すばる舎

1949年熊本生まれ。明治大学法学部卒業。軽妙な語り口と分かりやすい経済・市場分析、鋭い株価分析には定評がある。「個人投資家サイドに立つ」ことをモットーに精力的な活動を続けており、兜町における有望株発掘の第一人者と…

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