「異常はかならず修正される!」が経済の原則
北朝鮮による地政学リスクが顕在化し、アメリカではトランプ政権が政治の混迷を招いている。中国、ロシアもそれぞれ問題を抱え、欧州ではテロが相次いでいる。イギリス、フランス、ドイツの政局も混乱気味である。
昨今の株式相場は、このような外部要因に大きな影響を受けるようになった。2017年9〜11月は世界的なリスク・オンの様相が鮮明となり、株式市場は軒並み高となっている。しかし、基本的に、この流れは変わらない。いや、2018年はよりその傾向が顕著になるだろう。
このような〝困ったとき〟には、どうしたらいいか。オーソドックスな方法としては、好材料を内包した好業績銘柄の安値をていねいに拾う作戦が有効になる。すなわち、相場が急変したときに冷静さを失わないことだ。「異常はかならず修正される!」。これは経済の原則である。
ちなみに株価は、EPS(1株利益)とPER(株価収益率)の〝積〟によって算出される。この場合のEPSは予想値であり、ファンダメンタルズ(経済の諸条件)に影響を受ける。PERには市場センチメント(人気、需給)が反映される。
相場が急変してもパニックに陥らないためには、投資指標に頼る方法がある。全般相場の状況を把握するためには、日経平均株価の値動きに一喜一憂するのではなく、それぞれの投資指標をノートなどに記帳することをお勧めする。
これは毎日続けるのが望ましいが、相場が急変したときだけ行なっても、かなり効果が出る。下記の表は日経平均株価の投資指標を時系列に並べたものだが、これを見ると、8月18日を境にPERが14倍を割り込み、9月8日には13.69倍まで下がった。そして、PBR(株価純資産倍率)は1.22倍、配当利回りは1.83%である。
翌9日に北朝鮮の建国記念日を控えていたが、この数値をつかんでいれば、打診買いを入れられたのではないか。少なくとも、この安値水準でパニック売りを出すことは避けられたはずだ。こんなドン安値を売っては、悔いを残す。
[図表1]日経平均株価の投資指標(2017年)
2017年10月20日、日経平均株価のPERは15倍の大台に乗った。なお、PERはここ数年、13〜17倍ゾーンで動いている。
先人は、「相場は高値圏では強く見え、安値圏では弱く見える!」と戒めている。キーとなる投資指標を押さえておけば、高値圏で売り、安値圏で買えるようになる。
日経平均株価の見通しの立て方とは?
日経平均株価の見通しを立てるためには、将来、1株利益の何倍まで買われるかを考えておく必要がある。11月24日時点の1株利益は1525円だった。同日の日経平均株価の2万2550.85円は、PER14.79倍に相当する(2万2550.85円÷1525円)。ちなみに、2017年3月時点の1株利益は1245円であり、2割強増えている。
大手証券の調べでは、リーマン・ショック前の2007年前後はPER18倍程度、アベノミクス相場開始以降では、2015年6月に16.6倍まで上昇している。
仮に、PER18倍まで買われた場合、日経平均株価は2万7450円になる(直近1株利益1525円×18倍)。16倍では2万4400円である(1525円×16倍)。PER16倍は無理な注文ではないだろう。
逆に、下値メドも探っておく必要がある。PER13倍では1万9825円(1525円×13倍)、12.5倍の場合は1万9063円(1525円×12.5倍)となる。考えにくいが、PER12倍なら、1万8300円(1525円×12倍)となる。
日経平均株価の投資指標は、東京証券取引所などのネット情報、日本経済新聞のマーケット欄などで確認することができる。相場の現状を正しく認識するために、ぜひこのような投資指標をチェックしていただきたい。
[図表2]日経平均株価のフシ目と上値メド
上の表は、日経平均株価のフシ目と上値メド(その根拠)を示したものである。すでに、①〜④まではクリアした。
なお、2018年の日経平均株価(筆者の予想)については、本書(『東京オリンピックまであと2年 新成長株で勝負せよ!』)第4章で詳述している。ぜひ参考にしていただきたい。