地政学リスクの心配があれば、積極的には買えないが・・・
不愉快なことだが、2018年以降も北朝鮮リスクとは向き合っていかなければならない。問題行為を起こす隣人を無視できないのと似ていて、日本にとって隣国の1つである北朝鮮の挑発行為に耐えるのは〝宿命〟である。
ただ、懸念されるのは北朝鮮の行動がエスカレートしていることだ。そして、「アメリカが想像もつかないことを敢行する」などと、威嚇している。
筆者は、現状ではアメリカとの軍事衝突はあり得ない、と判断している。ただ、トランプ大統領は八方ふさがりだけに、何をしでかすか分からない。北朝鮮の挑発行為に業を煮やしたトランプ大統領が軍事攻撃を決断した場合、いったいどのような事態が引き起こされるのか。
先ほども触れたが、2017年8月29日、北朝鮮は北海道上空を通過する弾道ミサイルを発射し、9月3日には核実験を強行した。
当時、これを受け、「地政学上のリスクが心配される段階では、さすがに積極的には買えない。ハワイ周辺にミサイル落下などがあれば、それをきっかけに日経平均株価58の1万8000円割れも視野に入る」とコメントする市場関係者もいた。地政学上のリスクとは、アメリカによる北朝鮮攻撃である。
まったく予断を許さないが、アメリカと北朝鮮の軍事衝突はリスクが大きすぎる。韓国はもちろん、当然、日本も無傷ではいられない。株式市場を取り巻く空気も一変するだろう。日経平均株価は、急反落に転じる。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた今、軍事衝突は何としても避けてほしい。いや、避けねばならない。しかし、北朝鮮も何をしてくるのか、まったく読めないのも事実だ。2017年11月29日、北朝鮮は75日ぶりに大陸間弾道ミサイル「火星15」を発射した。これは、アメリカ本土全域を射程に収める可能性があり、一段と脅威が高まっている。
ただ、リーマン・ショックのようなテールリスクと地政学上のリスクは違う。その点はしっかり認識しておくべきだろう。ちなみに、テールリスクとは想定外の暴落(大幅な株価下落)がもたらすリスクである。テールリスクの衝撃、損失ははかりしれないが、地政学上のリスクは一般的にその損失が限定される。
「北朝鮮リスク」を材料に急騰した株の例
それと、不気味なのは、金正恩朝鮮労働党委員長が、「大陸間弾道ミサイル搭載用の水爆は、電磁パルス攻撃を加えることもできる」と主張していることが報じられている点である。
ソウル、東京上空で核爆発が起こった場合、強力な電磁波が発生、すべての電子機器は機能停止に陥る。電子機器が使えなくなれば、発電所も電車も止まる。電力、水道、交通などの社会インフラは瞬時に壊滅する。インターネットも使えなくなり、「電気のない世界」が訪れる。
戦闘機さえ出撃できないおそれがある。電磁パルス攻撃は、相手の戦闘意欲をそぐために使われるが、人的被害もある。恐ろしい話だ。放射能汚染が懸念される。
電磁パルス攻撃に対する防御対策について、日本はまったく進んでいないといわれている。アメリカは2004年以降、こうした事態を想定、対策を行なってきた。ドイツも万全らしい。平和ボケの日本は無防備である。
困った話だが、「生き馬の目を抜く」兜町では、これを材料にさっそく電磁波関連株が人気化した。ここの人たちは、転んでもただでは起きない。いや、投資家はすべからくそうあるべきだろう。
技研興業(9764)は、消波ブロックの型枠レンタルが主力の会社だ。近年は独自のシールド技術を生かし、放射線防護ボード、電磁波シールド工事、防衛関連分野に注力している。
放射線防護ボードは鉛など有害な重金属を使っておらず、放射線量は10分の1になるという。電磁波関連では電波暗室、電波吸収体など多様な製品群を取りそろえている。防衛省との取引もある。
現状の危機的状況下においては、必要不可欠の企業ではないか。細谷火工(4274)、石川製作所(6208)などの兵器メーカーよりも、実際的な存在意義は大きいと思う。
技研興業の業績は2018年3月期、2019年3月期ともに横ばい予想だが、1株利益は24円がらみを確保できる。配当は1円を行なっている。株価は急騰したあと、その反動があって調整している。しかし、押し目は買える。
[図表]技研興業(9764)の日足
また、巴コーポレーション(1921)は建築空間に電磁波シールドを提供していると報じられた。このほか、タツタ電線(5809)、岡谷電機産業(6926)、オリジン電気(6513)などもこの関連として注目されている。
今後しばらく、北朝鮮による地政学上のリスクは消えることはないだろう。しかし、不必要にうろたえているばかりでは能がない。現実的な問題として受け入れ、そのリスクを逆手にとって投資に臨む勇気と気概が求められるのではないか。
「ピンチはチャンス!」とよくいわれるが、考えようによっては「リスクもチャンス!」になり得るのだ。防衛関連銘柄などの急騰ぶりは、それを見せつけた。
もちろん、このような場合の投資スタンスは、短期・順張りであり、飛び乗り→飛び降りを素早く行なわなければならない。