マーケットに大きな影響を与える「GDP」
株式市場の現状を知るために、株式の時価総額とGDP(国内総生産)を比較することも参考になる。時価総額は上場企業の株価に発行済み株式数をかけて算出する。表を見ると、2008年、2009年、2011年以外の時価総額は毎年、前年を上回っている。特に、2012~2015年にかけての伸びが大きく、アベノミクスの効果がよく分かる。
時価総額の増加は、株価の上昇が主因であり、企業業績、および将来の成長に対して期待が大きいことを意味する。
GDPは、一定期間の間に国のなかで生産されたモノ、および提供されたサービスによって、どのくらいの付加価値が生み出されたのかを表す数値である。モノ、サービスの総額から原材料費などを引いて算出する。
GDPも、その国の経済規模、景気動向を知るうえで重要な指標であり、四半期ごとに発表される数値は、マーケットに大きな影響を与える。
時価総額とGDPの差額に着目することも、株式市場の現状を認識するうえで参考になる。これは、アメリカのカリスマ投資家、ウォーレン・バフェット氏が重要視していることでも知られている。
時価総額とGDPの比較では、2013年までは時価総額がGDPに対し、マイナスで推移した。株価は過小評価(売られすぎの状態)されてきたのである。
「2020年までにGDP600兆円」が目標だが・・・
一方、2014年以降は、時価総額の金額がGDPのそれを上回って推移している。2015年の比較では、時価総額がGDPより59兆円強多くなっている。2007年以降の比較では、突出した金額だ。これは通常のケースでは相場の過熱を意味する。
日経平均株価は、2015年6月24日のザラバ高値2万952円が1年後の翌年6月24日には1万4864円まで急落した。これは、イギリスのEU離脱など外部のマイナス要因が多大に影響したといわれているが、過大評価(買われすぎの状態)の〝反動安〟ともいえる。
2016年における時価総額とGDPの差額は40兆円強である。2017年前半の日経平均株価は、おおむね高値圏でもみ合ったが、GDPが横ばいである以上、ある意味では当然だろう。
[図表]株式の時価総額とGDPの推移(単位:兆円)
安倍政権は、アベノミクス第2ステージの経済政策で、「2020年までにGDP600兆円」という目標を打ち出した。これには「人口減少が続くなか、実現不可能な絵に描いたモチ」などと揶揄する声も多い。しかし、「GDPは増えなくていい」と主張する人たちの存在が、失われた25年の元凶だったことを忘れてはならないと思う。
それに、2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される歴史的な年である。東京五輪の接近とともに、GDPが600兆円に向かっていけば、当然、株式市場も活況を呈するだろう。