前回に引き続き、ドイツのエネルギー供給事業者「E.ON社」の動向を探ります。今回は、E.ON社が取り組む家庭向け太陽光・蓄電関連サービスについても併せて説明します。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

他社と共同開発した「蓄電システム」を販売

前回の続きである。ここでは、なかでも家庭向け太陽光・蓄電関連サービス「E.ON  Aura」および「Solar-Cloud」、そしてEV関連の取り組みに着目したい。

 

「E.ON Aura」は、E.ON社が2016年4月に提供を開始した家庭向けサービスで、SolarWatt社と共同で開発した蓄電システムを販売し、希望する顧客には太陽光発電システムの販売や、特別な電気料金メニューの適用を行うというものである。なお、SolarWatt社は、ドレスデンに本社を置く蓄電システムメーカーである。

 

E.ON社は、同蓄電システムの運用により、家庭の電力需要の自家消費比率を30%程度から70%程度にまで高められるとしている。また、蓄電システムの容量は基本的に4.4kWhであるが、11kWhまで容量を拡充することも可能であり、幅広い電力需要の家庭に対して適用可能である。

 

E.ON Auraの顧客は、E.ON社から再生可能エネルギー由来の電力の供給を受けることも可能である。これにより、顧客は、家庭の太陽光発電で発電した電力と合わせて、家庭で消費する電力の100%を再生可能エネルギー由来とすることが可能である。

太陽光発電の余剰電力を活用できるサービスも開始

太陽光発電に関連するさらに進んだサービスとしてE.ON社が2017年4月に始めたのが、図表1に示す「E.ON SolarCloud」と呼ばれるサービスである。

 

[図表1]E.ON SolarCloudのサービス内容

出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

 

これは、E.ON社がE.ON Auraの太陽光発電および蓄電池を保有している需要家に対して提供しているサービスで、家庭需要家が太陽光発電の余剰電力を仮想的な「電力口座」に蓄電することができ、電力が不足するときには、いつでも「電力口座」から電力を活用できるというもので、いわば家庭需要家がクラウド上に蓄電池を持っているかのように太陽光発電の余剰電力を活用できるサービスである。需要家は、アプリで「電力口座」に貯まっている残量をいつでも確認することができる。

 

月額21.99ユーロ以上(2017年10月現在)のサービス料金を払えば、同サービスに加入でき、月額26.99ユーロ以上(2017年10月現在)を払えば、追加で太陽光発電の発電量監視サービスや、フランスのAXA社による太陽光発電システムの補償を受けることも可能である(以下の図表2参照)。家庭に設置した太陽光発電の発電量が十分あれば、「電力口座」を活用することにより、家庭で消費した電力の全量を太陽光発電で賄うことも可能である。

 

[図表2]E.ON SolarCloudのサービスメニュー

出所)E.ON社“E.ONFactsandFigures2017”をもとに野村総合研究所作成
出所)E.ON社 “E.ON Facts and Figures 2017”をもとに野村総合研究所作成

 

この話は次回に続く。

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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