前回は、新しい経営理念の作り方を説明しました。今回は、後継者主導の「新経営理念」をチェックする際のポイントを見ていきます。

自らの経験を「押し付け」にならないように伝える

後継者主導での新経営理念のアウトラインができたならば、それを現在の経営理念と対比してみることが必要になります。

 

もちろんその過程では、「こうした経験があったため、この部分には反映させた方がいい」「これは押さえておかなければならない」というようなアドバイスは積極的にすることです。

 

あるいは過去に経営理念を対比したときの経験を持ち出してみるのもよいでしょう。現経営者が自らの代の経営理念を打ち出した際に、先代の経営理念のここは引き継いだ、ここは引き継がなかったということや、その結果どうなったのかといったことを説明するのはたいへん重要です。

 

後継者からすれば、それは客観的に見ることのできる事例のひとつですから、今の対比作業に活かせる部分が見つかるかもしれません。ただし「俺が言っているのだから間違いない」というのでは、実質的な主導権は現経営者が握っていることになってしまいます。きちんとした具体的な経験や事例、根拠を明らかにした説明が現経営者に求められます。

新経営理念と一緒に会社の目標・行動指針の作成を

経営理念をすり合わせる前に、後継者の方に是非おすすめしたい事があります。新経営理念と一緒に会社の目標(ビジョン)及び行動指針(基準・規範)を作成してください。

 

会社の目標(ビジョン)とは、例えば、会社は誰に対してどのような価値を提供するのか、あるいは、会社は誰に対してどんな価値を提供し、社会に対してどのような貢献を目指すのかといった内容です。行動指針とは、会社の目標を達成するために常に心がける考え方ないし判断に迷った時に立ち返る行動原理です。

 

この経営理念・会社の目標(ビジョン)・行動指針等を作成する事によって、現経営者とのすり合わせをより具体的に行う事ができます。

 

現経営者が大切にしてきた目標・行動原則等の中から何を引き継いでいくのか、何を変えるのか、新しい理念・目標・行動指針等は何であるのか。そして、なぜ残すのか、変えるのか、新たに付け加えるのかが、後継者にとっても、現経営者にとっても納得感のあるものになるはずです。

 

[図表]経営理念をすり合わせる

経営者(親)からヒアリングしておく。
そのなかから、経営のうえで必要だと判断したものを引き継いでください。
このヒアリング作業とすり合わせが、
経営者(親)の後継者(子)に対する
信頼感を厚くします。
経営者(親)からヒアリングしておく。 そのなかから、経営のうえで必要だと判断したものを引き継いでください。このヒアリング作業とすり合わせが、 経営者(親)の後継者(子)に対する 信頼感を厚くします。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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