割安な「旗竿地」や「変形地」に目がいくが・・・
「コンパクトアパート」は十数年前から、東京23区内で供給され始めました。特にJR中央線沿線に多く、はっきりした数字は分かりませんが、500~1000棟ほどはすでに存在していると思います。
従来の「コンパクトアパート」も前回までに説明したような「ブルー・オーシャン戦略」に合致する商品企画が多いのですが、私はニッチでユニークな「コンパクトアパート」の特徴をさらに明確にすることができると考えています。
いわば木造アパートによる「狭小ワンルーム」である「コンパクトアパート」の可能性を極限まで追求したらどうなるのか。
今回からはその具体的な姿を説明していきます。
「コンパクトアパート」の可能性を極限まで追求するには、まず土地の選び方にこだわる必要があります。なぜなら、「コンパクトアパート」の特徴を発揮しやすい土地とそうでない土地があるからです。
現在、都内で販売される投資用新築アパートや、個人投資家が土地から買って新築アパートを建てる場合、価格が割安な「旗竿地」や「変形地」といわれる土地を選ぶケースが少なくありません。
「旗竿地」とは、「敷地延長」「敷延(しきえん)」などとも呼ばれる形状の土地で、文字通り旗型の形状をした土地のことです。
図表を見れば分かるように、前面の道路に接する間口部分が狭く、建物を建てられる奥の部分までは細長い通路があります。
[図表]「旗竿地」の例
そもそも、この通路部分の幅が最低2m以上ないと、建築基準法という法律の規定の上で、基本的に奥の部分に建物が建てられません。また、周囲が隣地の建物に囲まれていて、通風や採光が良くありません。
そのためアパートに限らず建物が建てにくく、その分、価格は安くなっているわけです。
また、「変形地」とは、敷地の形状が正方形や長方形ではなく、三角形や台形などの土地です。敷地内に大きな高低差がある場合も含めていいでしょう。こちらもやはり、建物を建てようと思っても設計がしにくく、また建築費がアップしやすくなります。
住戸がたくさん入る、正方形や長方形の地型にこだわる
これに対し、「コンパクトアパート」の特徴を生かすのであれば、正方形や長方形の土地にこだわるべきです。
正方形や長方形といった地型の良い土地は、旗竿地や変形地に比べると建物を建てる上での各種規制がそれほど複雑ではありません。設計上、住戸をたくさん入れやすいのです。
また、正方形や長方形の土地は、二方向が道路に接する角地にあることが多く、同じ面積であっても建てられる建物の大きさが10%割り増しされるケースもあります。
その結果、土地を最大限まで有効に活用することができ、結果的にアパート全体の収入アップにつながるのです。
もちろん、土地の単価(㎡当たりの価格)は同じエリアの旗竿地や変形地より高くなりますが、一般的なアパートより同じ面積に住戸をたくさん入れることができ、利回りがさほど下がることはありません。
ひとつひとつの住戸が狭く、土地の収益力を高められる建物だからこそ条件の良い土地に建てる。この逆転の発想こそ、「ブルー・オーシャン戦略」に合致するものです。