予定額の一部を返済するぐらいなら、手元に現金を
借り入れ先の金融機関と不動産業者への相談は、なるべく早く動いたほうがいいでしょう。遅ければ遅いほど、その後の対応がしにくくなります。危なそうだなと思ったら少なくとも不動産業者には連絡することをおすすめします。「この物件の収支、まずいな。今月はいいけど、来月は・・・」と思ったときが最良のタイミングです。
何も言わずにいることだけは避けてください。「こういう状況だから、今月は予定していた支払いができません」としっかり伝えましょう。
リスケの合意が返済日までに間に合わずに滞納する場合、返済予定額の一部のみ返済することはしないほうがよいでしょう。というより、できないはずです。100万円を返さなければならないところ、50万円だけ返すというのは基本的にできません。50万円でも滞納扱いになるので結果は同じです。それなら手元に置いておいたほうがいいというものです。
それに、返済は利息から先に充当されていくので、少額を支払ったところで元本は減りません。銀行は、「今月、約束の100万円を払えないなら、来月200万円払ってください」と言ってきます。そこで、もう無理だと告白し、リスケをお願いするのです。
こうすることでキャッシュが回るようになれば、とりあえずは何とかなります。新規でその金融機関から借りることはできなくなる可能性は高いのですが、細々と賃貸経営を続けていくことはできるでしょう。本業の収入から補填し続けるよりはずっとよいと思います。
借り入れ先によって対応は異なりますが、アパートローンの滞納情報を信用情報機関に登録していたり、金融機関同士で横のつながりを持っていたりすることはあまりないので、他の金融機関から借りることはできる可能性は高いといえます。
債務超過になったら、一度「出口」を迎える必要がある
リスケをすれば当面の支払いにおびえることはなくなるでしょう。しかし、これだけだと根本的な問題を解決できないことがあります。
例えば、ローンが残り1億円ある物件で、毎月の返済が100万円、現況の家賃収入が75万円だとします。25万円足りていない状況です。そこで返済額を月50万円にリスケすると、返済期間にどれくらいの差が出るでしょうか?
金利3%で考えると、当初の予定では残りあと約9年で完済するところ、リスケ後には23年かかることになります。前述のとおりローンは利息から減っていくので、返済額を減らすと元本はなかなか減っていかないのです。
リスケにはさまざまな方法があるのですべてがこのようになるわけではありませんが、返済期間が延び、総返済額がかえって増えることは確実となります。苦しい状態は続くのです。結局、問題を先延ばししているにすぎません。
家賃収入が増えればいいですが、経営努力によって入居率を改善することは難しい場合があります。その場合はリスケ前と同じように赤字になるリスクを抱えたまま、長い期間を過ごすことになります。
リスケによる解決が難しいのは、すでに債務超過の状態になっているからです。考えられる原因は、購入時とは市場の状況が変わって物件の価値が下落しており入居率が恒常的に下がっている、またはそもそもの購入価額が高すぎた、あるいはその両方です。
いずれにしても、このような状況下では一度、出口を迎える必要があります。つまり、物件を手放すことです。その方法が、本書の次章以降で説明する任意売却です。
ポイント
①赤字の兆候が見えた時点で、不動産業者に相談する。
②金融機関に収支のありのままを話し、リスケジュールの相談をする。
③本業の収入や新規の借り入れで赤字を補填しようとしない。やむを得ない場合は、返済を止める。
[図表]赤字物件対処法フローチャート