本連載では、株式会社カウルの代表取締役・三井和之氏の著書、『不動産投資の赤字を脱却するスゴイ方法』(サンライズパブリッシング)から一部を抜粋し、不動産投資で赤字の兆候があるときの対応策を見ていきます。

赤字経営に追い込む諸悪の根源は「入居率の低下

収益不動産のキャッシュフローが赤字になったときに最初に自分に言い聞かせてほしいことは、頑張りすぎないことです。本業の収入から穴埋めを続けていくようになると、生活費が圧迫され、家族にも迷惑がかかることになります。あくまでも不動産投資は賃貸経営という事業。会社とプライベートを分けるように、賃貸業と家族は切り離して考えるべきです。自分を追い込みすぎないように、大切な人にしわ寄せがいかないように考えてほしいと思います。

 

心を落ち着かせたら、客観的に状況を分析します。まず、ローンの返済額が家賃収入を上回っているとはどういうことなのかを考えてみましょう。物件を購入したときには、黒字が出るはずでした。もともと完璧な計画だったはずなのに、どこに狂いが生じたのでしょうか?

 

赤字の構造を分解すると①家賃収入が購入前に考えていたよりも少なくなっているため、②もともとローンの返済額が高いため、の2つに分けられます。

 

このうち、直接的な原因は①の家賃収入の減少です。②の毎月の返済が多すぎるのかどうかをみる指標は、返済比率です。満室想定家賃収入に対する返済額の割合を表したもので、一般的には30~40%が目安といわれています。この率が低ければ低いほど、空室率が増えても黒字を維持できる可能性が高いというわけです。

 

結局のところ、返済比率は空室が発生したときにどれだけ持ちこたえられるかを示す指標ですから、諸悪の根源は入居率の低下といえます。

 

満室経営が続いていれば、赤字に悩むことはありません。当たり前のことと思われるかもしれませんが、冷静さを失っている状態になると、こういった基本的なことも見落としてしまい、ずるすると無理な返済を続けてしまうことがあります。しっかり自分の意思で判断することが必要です。

入居率低下が立地の場合、物件売却を視野に入れる

入居率が低下した原因は主に次の2つに分けられます。

 

1. 運営管理の問題

2. 立地の問題

 

運営管理の問題とは、共有部の清掃や居住部分の修繕などを怠ったり、入居募集を積極的にしていなかったりといったことが挙げられます。自主管理であれば少しコストをかけてでもきれいにする、委託管理であれば管理会社にハッパをかけ、改善しないようなら他の業者に替える、といった対策が考えられます。

 

運営管理の問題であれば、物件を所有したままリカバリーが可能です。

 

難しいのは、立地の問題です。不動産とは読んで字のごとく動かすことができないものなので、物件の所在する場所がとても重要になります。賃貸需要がないところのマンション・アパートを買ってしまうと、改善することは非常に難しいのです。購入した当初はよかったとしても、後から周囲の状況が変わって市場が悪化することもあります。

 

入居率が低下した原因が立地にある場合、物件を所有したままリカバリーすることは困難です。いくらきれいに外壁塗装をしても、最新設備を備えても、需要がほとんどない地域では、満室に持っていくことは難しいでしょう。

 

このようなときには、売却を視野に入れて考える必要があります。せっかく苦労して物件を探し、融資付けに駆け回って手に入れた不動産を手放すのは勇気がいるかもしれません。しかし、不動産投資は賃貸経営という形をした事業です。

 

事業であるからには、数字を達成できない場合に原因を追求し、改善しなければなりません。その中で、不採算部門のリストラが発生することは少なからずあります。赤字の原因が後からフォローできないものであれば、私情をさしはさまずに事業を辞める、という決断が必要です。

 

ここでいう事業を辞める、というのは個々の物件を売却することを指します。不動産投資家そのものを引退する、ということではありません。場合によっては、しばらくお休みしなければならないこともありますが、投資家として返り咲くことは可能です。

 

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三井 和之

サンライズパブリッシング

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