「賃金の年率3.0%上昇」が見えてきた!?
米連邦準備理事会(FRB)は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、1.50-1.75%とした。それから約1ヶ月を経て、5月のFOMCでは予想通り利上げを見送ったが、6月のFOMC(12-13日)では、今年2回目の利上げの可能性が高い。
3月の利上げ実施直後は、どちらかと言えば(利回りで)下げがちだった長期金利だが、4月末には一時、10年米国債利回りで3.0%を超える局面もあり、従来の債券市場の落ち着きには変化が見られる。
市場で懸念されていることは、米国労働市場の引き締まり感が賃金の上昇を招き、物価全体の上昇に繋がることだ。雇用市場は、完全雇用状態に加えて、雇用の伸びも堅調に推移しており、失業率は依然、低水準を保ったままである。最も警戒すべき賃金の上昇も、年率2.6%(4月雇用統計)‐2.7%(3月雇用統計)程度、上昇するところまできており、この水準はFRBがトリガーとして意識している賃金の年率3.0%上昇が視野に入る状況である。
こうしたことから、FOMC後の発表文でも、FRBは2018年内にあと2回の計3回の利上げを予測する従来の見通しを変えていない。
「非農業部門の就業者数」は本当に伸び悩んでいる?
米労働省が先週4日に発表した4月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比16万4千人増と、市場予想の19万2千人増を下回った。1時間当たりの平均賃金も前月から4セント(0.1%、3月は0.2%増加)の伸びにとどまった。これを受けて、FRBは利上げのペースをやや緩めて鈍化に転じるのではないかとの観測も浮上している。
しかし筆者は、この見方には否定的である。そもそも、非農業部門の就業者数は振れの大きい数字で、1回の統計で判断が変化するという性質のものではない。また、4月は数字が下ぶれたが、3月の10万3千人増から13万5千人増とならせば、予想比で変わらずと読める。失業率自体も、3.9%まで低下している。
FOMCで示された経済成長率見通しは2.7%と、昨年12月時点の予想から0.2%引き上げられた。米国経済は、順調な成長軌道にあるとの見方をFRBは維持している。すなわち、足元のように、堅調な経済状況が続くのであれば、FRBは、粛々と利上げを継続すると見るのが妥当であり、年3回の利上げが実行される可能性は高まったと考える。
引き続き年内計4回の利上げの可能性も残しながら、”accommodative (景気動向とインフレ率に注意して機敏に)”対応するスタンスが維持されるだろう。