今回は、「将来得られるお金」より「手元のお金」の価値が高い理由を見ていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書、『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門 プライシング・ポートフォリオ・リスク管理』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、株や債券、事業や不動産などの「本来の価値」を推定するプライシング理論について解説します。

今手元にあるお金は、投資によって増やすことができる

前回の続きです。

 

牛から総額260万円のキャッシュフローが得られることがわかりました。では、牛の公正価値は260万円と考えていいのでしょうか? 答えは「ノー」で、それより低い値になります。なぜかというと、260万円は今すぐに手に入るわけではなく、5年間待たないと全額は手に入らないため、その分の“不便さ”を考慮して価値を割り引いて考えなければならないからです。

 

では、すぐにお金が入ってこないことによる“不便さ”は、具体的にどうやって評価に反映させれば良いのでしょうか? そのことについて考えてみましょう。

 

なぜ、すぐに入ってこないお金を“不便”と考えるのかというと、手元にないお金は投資に使えないからです。お金とは本来、単に銀行に預けておくだけでも増えていくものです。今手元に260万円あって、それを預金金利1%で銀行に預けておけば、5年後には273万円になります。もっと利回りの高い運用商品に投資すれば、もっと増やすことができるかもしれません。今手元にあるお金は、投資によって増やしていくことができるので、将来得られるお金よりも価値が高いのです。

 

預金金利1%の下では、今手元にある260万円と、5年後に得られる273万円は同じ価値を持つと考えることができます。見方を変えれば、5年後に得られる273万円は、現在手元にあるお金で換算すると260万円分の価値しかないということです。同様にして、260万円を利回り1%で10年間預けておくと、287万円になります。つまり、10年後に手に入る287万円と手元の260万円は価値が等しいことになります。この考え方でいくと、将来手に入るお金は、早く手に入るものほど価値が高いということになります。

 

[図表]今日のお金と将来のお金

<ポイント>

手元にあるお金はすぐに投資に使えるので、将来入ってくるお金よりも価値が高い。将来入ってくるお金は、手に入るタイミングが早いほど価値が高い。

同じ金額でも「得られるタイミング」で価値が変わる

ここまでで、お金は手に入るタイミングが早いほど価値が高くなることがわかりました。同じ金額でも、それが得られるタイミングによって価値が変わるのです。そのため、プライシング理論では、将来得られるお金の価値を「現在手元にあるお金」の価値に換算して測るということをやります。具体的には、将来キャッシュフローを割引いて、現在手元にあるお金の価値に換算します。このように、将来キャッシュフローを現在手元にあるお金の価値に換算した値のことを、将来キャッシュフローの割引現在価値と呼びます。

 

割引現在価値は、キャッシュフローの「値段」と考えてもらうとわかりやすいでしょう。得られるまでに時間がかかるキャッシュフローほど、すぐには投資に使えなくて不便なので、値段が安くなるということです。プライシング理論では、投資対象をキャッシュフローの系列に置き換えて考え、それぞれのキャッシュフローの「値段」、つまり割引現在価値を計算します。そして、投資対象そのものの価値は、その投資対象が生み出す将来キャッシュフローの割引現在価値の合計と考えます。つまり、次のような関係があるということです。

 

投資対象の価値=将来キャッシュフローの割引現在価値の合計

 

この関係が、プライシング理論の根本となる重要な考え方です。次回は、具体的に割引現在価値をどのように計算するのかを見ていきましょう。

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

冨島 佑允

株式会社CCCメディアハウス

投資に使える! 金融がわかる! これから始める人でもファイナンス理論の“あの独特な考え方”が一から理解できるように、資産運用に携わってきた金融のプロが 1.プライシング理論(“本来の価値”をどうやって求めるか?…

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