前回は、開業に適した場所について説明しました。今回は、クリニック開業のための物件を探す際に活用したい「診療圏調査」について見ていきます。

開業にあたっては必ずチェックしたい「診断圏調査」

物件探しをするにあたり、外部ブレーンには「診療圏調査」も依頼するようにしましょう(下記図表参照)。診療圏調査とは、開業候補地における「見込み患者数(つまり、開業したらどのくらい患者さんが来てくれそうか)」を推定するためのものです。

 

[図表]診断圏調査の調査項目の一例

最もシンプルなのは、診療圏の人口に受療率をかけ、それを競合医院数(自分の歯科医院も含む)で割るという方法です。開業地から円形で地域を絞り、一次診療圏と二次診療圏に分けて数値を出します。さらに複雑なものになると、単純に円形ではなく、大きな障害物で診療圏地域を絞り、患者数を計算します。

 

たいていの場合、診療圏調査は材料会社に依頼すれば無料で作成してくれます。

 

「診療圏調査は参考にならない」という考えの下、調査をしないまま開業する先生も少なくありません。しかし、この調査には周辺歯科医院の情報や人口、年齢構成等を知るのに役立つ情報がたくさん含まれているので、開業にあたっては必ずチェックすべきだと私は考えます。

 

たとえば、コンビニエンスストアやレストランのチェーン店などが出店する際は、必ず候補地周辺の情報を徹底的に洗い出し、マーケティング調査を行うのが常識です。歯科医院も人を集めなければならない点は同じです。マーケティングに匹敵する診療圏調査は必須でしょう。

 

とりわけ重視すべきは、「一次診療圏」の来院患者数です。一般的には、歯科医院から半径500m以内を一次診療圏、半径1000m以内を二次診療圏と捉えて調査します。気軽に通院できる一次診療圏の患者さんは、かかりつけになる可能性も高いので、数が多いほど有利です。

 

同じ「1日25人」でも、A物件は「一次20人、二次5人」、B物件は「一次12人、二次13人」の場合、A物件のほうがよい物件です。加えて、自分が得意とする診療を専門的にする歯科医院が周囲になければ、診療圏調査の予想来院患者数よりも、多くの患者さんの来院が見込めます。また、周辺人口の年齢層を確認して、自分の専門が活きるエリアかどうかを見極めることも大切です。

診療圏調査は内容を十分に吟味して活用を

私のお客さまで、次のような例がありました。先生ご自身が見つけて、大変気に入られた物件でしたが、激戦区の23区内で、診療圏調査の結果は「一次診療圏11人、二次診療圏17人」と、決して「よい」とはいえない数値でした。

 

23区内は特殊で、二次診療圏の数値はあまり当てになりません。数値だけ見ると「こちらで開業しましょう」と賛同しにくい結果でしたが、先生のお話を聞くうちに、私は「ここでも大丈夫」だと確信しました。その先生が得意とする治療は、この地域では得意とする競合歯科医院がなかったのです。

 

周囲に歯科医院が多数あったので、診療圏調査はよい結果ではありませんでしたが、実質この地域では競合なしの歯科医院となり、開業後も順調に診療収入が増え、繁盛歯科医院となっています。

 

診療圏調査は内容をよくよく検討しなければ、意味がありません。せっかくの情報を活用できずにムダにしてしまう先生も多いため、ここでも外部ブレーンの意見を聞いてみるとよいでしょう。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『一生稼げる歯科医院開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

一生稼げる歯科医院開業読本

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松本 泰世

幻冬舎メディアコンサルティング

歯科医師とほかの診療科の医師との大きな違いは、近い将来いずれは独立開業を迫られることになるという点です。開業準備は早ければ早い方が有利になります。しかし、具体的に何から手を付ければよいのかが分からずに開業準備を…

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