相続税法上、法定相続人にできる養子の数には制限あり
昔から相続税の節税対策として、よく知られているのが「養子縁組」です。
なぜ養子縁組が相続税の節税に繋がるのかというと、養子が「法定相続人」に加わり、法定相続人の数が増えるからです。法定相続人とは、被相続人に相続が発生した場合に「遺産を相続する権利がある」相続人のことです。この法定相続人の人数が増えることで、相続税の非課税枠である「基礎控除額」が増額します。
相続税の基礎控除額は、「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」ですから、法定相続人の数が多ければ多いほど基礎控除額が増額し、相続税額が下がるというわけです。
法定相続人の数で控除額が変動するのは、基礎控除だけではありません。法定相続人が多いほど得をするものとしては他に、①保険金②死亡退職金③相続税の税率の3つがあります。
③相続税の税率についてですが、相続税の総額を計算する上でも、法定相続人が多いほうが有利に働くのです。たとえば相続財産が3億円の場合を例に見てみましょう。相続人が子供2人の場合、税率は40%です。しかし、相続人が1人増えて子供3人になると、税率は30%に下がります。相続税額としては、2人の場合は6920万円、3人の場合は5460万円です。詳しい税額を知りたい人は、当事務所のホームページの相続税額シミュレーションをご活用ください。
このように、単に基礎控除額が増える以外にも節税効果があるので、法定相続人が1人増えるだけでもだいぶ違うわけです。
ただ、相続税法上では、法定相続人としてカウントされる養子の数に制限があります。過度な節税を避けるという意図があるのでしょう。法定相続人に含めることのできる養子の数は、「実子がいる場合は1人まで」「実子がいない場合は2人まで」です(相続税法第15条)。ちなみに、民法上では特に養子の数に制限はありません。
「養子縁組」が税務調査による指摘を受けにくい理由
相続税法の第63条に「養子縁組が相続税を不当に減少させる場合は否認できる」との記述があります。要するに、調査官が養子縁組を租税回避行為と判断した場合、その養子は法定相続人としてカウントされないということです。
しかし、養子縁組をするにあたって、必要以上にこの点を気にすることはありません。というのも、否認にあたっては「養子縁組が不当かどうか」が論点になるわけですが、この「不当」の定義が非常にあいまいなため、税務署側が「不当である」と立証するのが困難だからです。
たとえ節税目的が疑われる養子縁組であっても、養子縁組自体、非常にしっかりした制度なので、税務調査で指摘されることはそうないでしょう。