前回は、退職金を「本人の死後に受け取る」という節税スキームを紹介しました。今回は、「小規模企業共済」の節税面のメリットなどについて説明します。

個人事業主や小規模企業の役員なら、ぜひ活用の検討を

前回ご紹介した死亡退職金を利用しているのは、当事務所調べで、100人中約20人でした(退職金と税務調査を避けて、賢く節税しようして申告している相続人の数をカウント)。

 

先程述べたように、死亡退職金はやろうと思ってできる生前対策ではありませんが、退職金の給付制度自体を知らずにいるとしたら、非常にもったいないことです。一般のサラリーパーソンであれば勤め先から退職金が給付されるはずですが、小規模な企業の個人事業主や役員の人にも非常に有用な小規模企業共済という共済制度があるので、ぜひ活用していただきたいと思います。

 

小規模企業共済は、小規模な企業の個人事業主や役員で、条件を満たしている人には、ぜひとも利用を検討していただきたい共済制度です。非常にメリットが大きいからです。

納付期間の条件をクリアすれば確実に得する制度

小規模企業共済とは、小規模企業の個人事業主が事業を廃止した場合や、会社の役員が退職した場合などに、それまで積み立ててきた掛金に応じた共済金を退職金として受け取ることができる共済制度です。

 

「経営者にも退職金を」というコンセプトで、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営しています。利用資格があるのは、常時使用する従業員が20人(商業とサービス業「宿泊業、娯楽業を除く」では5人)以下の個人事業主や、その経営に携わる共同経営者および役員、そして一定規模以下の企業組合・協業組合・農事組合法人の役員です。共済の契約者が亡くなって、相続人が共済金を受け取る場合には、その共済金は死亡退職金として扱われます。死亡退職金については先程説明したので割愛します。

 

メリットとしては、①受け取る共済金(解約手当金)が退職金として扱われるため控除が受けられる、②掛け金納付期間に応じて、最大120%相当額の共済金が戻ってくる、③掛金の全額が所得控除の対象となる、の3つがあります。

 

ただし、掛け金の納付期間が240カ月(20年)未満の場合には元本割れのリスクもあるので、この点だけは注意してください。

 

この小規模企業共済ですが、非常にメリットの大きい制度にもかかわらず、生命保険などと違って販売員がいないので、あまり認知度が高くありません。しかし、納付期間の条件さえクリアすれば、損をすることなく節税できる素晴らしい制度なので、条件に当てはまる人はこの機会にぜひ利用を考えてみてください。

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

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岡野 雄志

幻冬舎メディアコンサルティング

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