「視覚」を利用した記憶が一番効率的
1分間経営では、グラフ化されたデータをただ見るだけです。スマートフォンやタブレットの画面をスライドさせて眺めるだけ。そんな方法がなぜ、経営に役立つのでしょうか。
「効率的に記憶をするには五感を生かせ」とよくいわれます。例えば、英単語を覚えるときには、目で見て、声に出し、手で書けば、記憶が定着しやすいというのです。
受験勉強ならそれでいいかもしれませんが、会社の経営には、これが応用しにくいのです。会社の財務データを覚えるために、社長が書類を声に出して読んでいたら、従業員は不審に思うでしょう。
仮に社内でなら、声に出して記憶することができたとしても、外出中のスキマ時間に実践するのは困難です。英単語のように、数字をノートなどに書き写して記憶するのも現実的ではありません。時間がかかりすぎます。
それを考慮すると、五感のなかでも「視覚」を利用した記憶が一番効率がいいといえるでしょう。見るだけですから、時間を大幅に節約することもできます。
繰り返し見ていれば、少しの変化にも気がつく
フラッシュカードという教育ツールを聞いたことがある人も多いと思います。幼児教育などに使われているもので、次々とリズムよくカードを切り替えて見せていく手法です。
カードには、絵や文字などが書かれています。その効果は医学的に証明されていない部分も多いのですが、右脳に訴えかけることで頭が良くなったり、記憶力が養われたりするといわれています。これは、まさに映像記憶=視覚に訴えた教育法です。
論理的な思考を司る左脳に対して、右脳は五感を通じた感性を担当しています。左脳では入ってきた情報の意味を考えたり、理解したりしながら記憶をしていきますが、右脳は目や耳から入ってきた情報を直感的に記憶します。
そのスピードは左脳とは比べ物にならないほど速いといわれています。しかも、左脳と比べて記憶容量も膨大です。特に目から入ってきた情報は視覚情報として、写真のような形で脳に記憶されます。例えば、10匹の犬の中に1匹だけ猫が混じっていたとしたら、私たちはすぐに猫の存在に気がつきます。
これは、犬の特徴と猫の特徴を比較して結論を導き出しているわけではありません。直感的に「猫が交ざっている」と気がつくのです。
会社の財務データも同じような面があります。繰り返し見ていると、ちょっとした変化にも気がつくようになります。数字の状態で見ていても気づきませんが、グラフ化して視覚的に記憶しておくことで、瞬時に変化に気がつくのです。
変化に気づくと、その理由を知りたくなります。理由が分かれば、対策を講じることができます。これらの繰り返しによって、短期間で経営改善が実行できるのです。
品質管理やコスト削減など経営改善の手法として、PDCAがよく知られています。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階を繰り返すことによって、改善を進める手法です。
PDCAの回数を重ねるほど、その効果も大きくなります。1分間経営では、PDCAを短時間で回すことができますから、スピード感のある経営改善ができるのです。