会社の数値を繰り返しチェックすることで、記憶が定着
1分間経営では、会社の財務指標を繰り返し眺めることが重要です。
「会社の数字なんて、1カ月に一度見れば大丈夫だろう」と思う人が多いでしょうが、はたして1カ月に一度だけ数字を見て、それを覚えていられるでしょうか。
例えば、ある日の午前中に2時間かけて経理担当者や税理士から説明を受けても、午後の仕事が始まれば、もうほとんど覚えていないのではないでしょうか。
「一生懸命覚えてもすぐに忘れてしまう」
「いい本を読んで感動したのに、1カ月も経たないうちになにが書いてあったのかほとんど覚えていない」
心当たりのある人は多いでしょう。
1分間経営を実践すれば、そんな悩みもなくなります。記憶が定着して、いつでも必要な会社の数字を取り出すことができるようになります。
なぜならそれは、会社の数字をチェックする時間がわずか数十秒であるため、何度でも繰り返しチェックできるからです。しかも、グラフとして視覚的にチェックしていくので映像として記憶に残ります。これが1分間経営の強みです。
わずか数十秒で確認できるから、反復が苦にならない
なぜ1分間経営では記憶が定着するのか、もう少し詳しく解説していきましょう。
大事な記憶でも簡単に忘れてしまうのには、記憶のメカニズムが関係しています。心理学においては、記憶を「短期記憶」「長期記憶」、そして「感覚記憶」の3種類に分類するのが一般的です。
「短期記憶」は、長く維持できません。一般的には数十秒だといわれています。また、容量の限界もあります。アメリカの心理学者ジョージ・ミラー氏は、短期記憶の容量は7プラスマイナス2であることを発見しました。
これを数字に置き換えると「5ケタから9ケタ程度しか記憶できない」ことになります。例えば、電話番号は03-1234-5678などと10ケタの数字から構成されています。9ケタよりも多くはなりますが、03は東京の市外局番であることがあらかじめ分かっていますし、残りの8ケタも4ケタずつに区切られていますので、比較的簡単に覚えることができます。
しかし、記憶したことは数十秒もすれば、忘れてしまいます。忘れないようにするには、短期記憶から長期記憶に移行させる必要があります。その「長期記憶」は、長い期間、維持できる記憶です。その期間の範囲は数分から一生涯にも及びます。
また、記憶の容量に制限がないのも長期記憶の特徴とされています。幼いころのことを今でも思い出すことができるのも長期記憶のおかげです。したがって、短期記憶で得た情報を長期記憶に移していくことができれば、いつでも引き出すことができる情報を得たことになります。
もしも「自分は記憶力が弱い」と感じたことがあるなら、それは短期記憶を長期記憶に移す作業ができていないだけのことです。〝記憶力〟は関係ありません。
[図表] 記憶のメカニズム
では、短期記憶を長期記憶に移すにはどうすればよいのでしょうか。すでに気づいているかもしれませんが、何度も「復習」する必要があるということです。
多くの人は幼いころから両親や学校の先生に「復習をしなさい」と言われ続けてきたのではないでしょうか。私もその一人です。
でも実際には、なかなかできません。復習にも時間がかかるからです。しかし、それが数十秒で、しかも電車での移動時間にできるとしたらどうでしょうか。1日に10回復習しても5分程度しかかかりません。これなら短期記憶を簡単に長期記憶へと、定着させることができます。
そして「感覚記憶」とは、外部からの刺激を瞬間的に記憶するもので、その多くは無意識です。例えば、外出したときの風景は瞬間的には覚えていますが、すぐに忘れてしまいます。このような記憶が感覚記憶です。
感覚記憶のなかで特別に注意が向いたものは短期記憶になります。例えば、昨日までは咲いていなかった桜の花が今日は咲いていたとすれば、記憶に残ります。