進行し、水晶体が硬くなってからの手術では目の負担に
白内障は緩やかに進行し、見えづらさを自覚する頃には相当、進行していることが少なくありません。特に、水晶体の混濁よりも硬化が進んでしまったタイプや、片方の目だけ白内障が進行している場合は、自覚症状が現れにくく、気づいたときには重症化していることが多いため、早期に発見し早期に対策を取ることが大切です。
「見え方に問題がなければ、白内障が進行しても差し支えないのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、白内障の手術では、水晶体が硬くなればなるほど、目に負担がかかるのです。
白内障が進行して水晶体がとても硬くなっていると、手術で角膜の内皮細胞に与えるダメージが大きくなります。さらに水晶体が硬くなると、硬くなった水晶体を摘出するために創口を大きく切るタイプの、従来型の白内障手術をしなくてはならない場合もあります。
創口が大きいと、そこから菌が入り感染症を起こすリスクも増えてしまいます。さらに、なめらかだった角膜が歪むもとになり、乱視になることもあるのです。せっかく白内障が治っても、乱視が強く出てしまい、場合によってはメガネでも十分な補正ができないということも起こり得ます。
見え方がそう悪くなっていなくても、白内障のために水晶体があまり硬くなってしまう前に早く手術を受けるほうが、これらのリスクをより確実に避けることができ、患者さんにとってメリットが大きいのです。
「早く手術するとまた手術が必要になる」は誤解
これは白内障においてだけの話ではありません。どのような病気やケガであっても、早期発見、早期治療が大事です。しかし白内障について、「早く手術をするとまた手術をしなければいけない」「眼内レンズは20年しかもたないから、早く手術すべきでない」ということを信じている人がまだたくさんいらっしゃるようです。
例えば日本人の死因の第一位であるがんも、早期のうちから自覚症状が出ることはまずありません。自覚症状が出たときには、進行している恐れがあります。そのため、自覚症状のない時期の早期発見のために定期的にがん検診を受けましょうと、国や自治体が盛んに呼びかけています。
早期発見、早期治療はすべての病気にとって大事な基本なのです。