眼内レンズの移植を不安がる患者は多いが・・・
前回の続きです。また、「手術後、再び見え方が悪くなると聞きましたが、本当ですか?」とか「眼内レンズは20年したら交換しなければならないので、なるべく手術は先延ばしにしたほうがいいと聞きました」ということを言っている患者さんをよく見受けます。
このような方たちは眼内レンズが将来劣化することを心配しているようですが、眼内レンズの材質やデザインは、一生入れておくことを想定して考えられていますので、いわゆる劣化していくことはほとんどないと考えてください。
前述の通り、若年者にも白内障は起こります。若くして白内障になってしまったご本人から考えれば、その年齢で眼内レンズを移植することは不安だと思いますが、眼内レンズは若年者であっても、将来問題となる可能性は非常に低いと考えられています。
病名の「イメージ」から不要な心配をつのらせる患者も
白内障のことをある程度調べている人の中には、「後発白内障」という言葉を見聞きしたことがある人もいるかもしれません。
病名だけ見ると、あたかも一度治療した白内障が、再発するかのような印象を受けます。「一度手術を受けたら、二度とできない」という人の中には、後発白内障になってしまったら、もう手術は受けられない、と思い込んでいる人もいるようです。
実はこの後発白内障は、白内障が再発することではなく、まったく別の状態です。白内障の手術時、ごくわずかな量の水晶体の細胞が目の中に残ります。それが術後しばらく時間をかけてゆっくりと増殖し、水晶体の袋の後ろ側が濁ってくるのが後発白内障です。
後発白内障は、程度が強くなった場合は視力が低下することもあります。しかし、これはYAGレーザーという種類のレーザーで簡単に治療することができます。YAGレーザー治療の後は、他に病気などがなければ、すぐに白内障手術直後の良好な視力に改善します。
もちろん、挿入した眼内レンズには何の影響も出ませんし、レーザー治療によって見え方が悪くなることもありません。白内障の手術を受けた人全員が、後発白内障になるわけではありません。なお、YAGレーザーの機器は、白内障の手術を行っている医療機関であればたいていは設置されています。
後発白内障は、白内障と名前がついているだけにたいへん誤解を招きやすいのですが、再発という考え方自体が白内障には存在しないことを覚えておいてください。