目の中の水晶体が「変性」することで発症
白内障は、目の中でレンズの役割を果たしている「水晶体」という部分の病気です。
水晶体は、主にタンパク質でできています。このタンパク質が加齢やその他のさまざまな原因で変性すると、水晶体が濁ったり硬くなったりしてしまうのです。これが白内障の状態です。
タンパク質は筋肉や内臓、皮膚など全身の組織を構成する成分です。タンパク質は酸化や加熱などにより変性をするという特徴があります。変性したタンパク質は二度と元通りには戻りません。たとえ健康体であっても、加齢によってタンパク質は不可逆的に変性・劣化していってしまうものなのです。
一部の身体の細胞は、一定のサイクルで新たな増殖を繰り返し、タンパク質も新しいものに置き換わっていきますが、実は水晶体には新陳代謝がほとんど起こりません。変性したタンパク質はそのまま蓄積されてしまいます。これが加齢によってほぼすべての人が白内障にかかる原因です。
水晶体が濁ったり硬くなったりすると、光をうまく屈折させることができなくなったり、ピント合わせが思うようにいかなくなったりします。そのため、進行すればするほど、見え方にさまざまな支障が出てくるようになります。白内障の自覚症状は多岐にわたり、個人差もあるのが特徴です。
代表的な症状は「まぶしさ」「視力低下」
また、白内障と聞くと「見え方が白くなる」と思われがちですが、見え方が白く見えるようになることはほとんどありません。代表的なのは、意外に思われると思いますが、「まぶしくなる」症状です。ほかに「老眼が進んだ」「メガネが合わなくなった気がする」などの視力低下の症状があります。
白内障では、水晶体が白くなるだけでなく水晶体が硬くなる場合もあります。人によって、主に白くなる=濁りが進んでいる人と、あまり白くはならないものの、水晶体が硬くなりやすい人がいます。私の経験では、水晶体が硬くなるタイプの白内障(核白内障と言います)は、一般的に視力低下の症状が出にくい傾向にあります。
つまり自覚症状がなくても、白内障が進行している場合があるのです。しかもやっかいなことに、この核白内障は白内障手術のときにたくさんの超音波を使用せねばならず、眼球の組織へのダメージが大きくなるのです。このことから、私は60歳を過ぎたら、すべての方に眼科受診による白内障検診をお勧めしています。