「高額落札」が期待できるターゲットに絞る
入札要綱が固まったらステップ⑤(第3回参照)として、オークションの案内を業者に向けて送るために、売却地のエリアなどによって送付先を個別に選定してリストアップします。むやみに送付して「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」方式にするやり方は非効率です。高く買ってくれそうな業者や需要がありそうな仲介業者にターゲットを絞ったほうが、競争原理が促進されて高値水準になります。
そもそもここでターゲットを外してしまうと興味を示してもらえず、オークションが成り立ちません。ですから、ターゲットの絞り込みには神経を使います。頼りは今までの経験と実績とネットワークです。「この物件だったら、あの業者が欲しがりそう」というのがある程度こちらで把握できていますし、心当たりがなくてもネットワークを使って「あそこにターゲットがいる」というのを探し出すことが可能です。
高く売るためには「徹底的な情報収集」が重要に
一例をお話しすると、あるとき、売却対象地の条件からマンション適地と判断し、マンションデベロッパーをターゲットに絞り込んでいたことがありました。ところが、市場の反応からしてビジネスホテル適地として売ったほうが買手はつきやすく、圧倒的に高値で売れているということがわかりました。それで軌道修正を行い、ビジネスホテル開発会社をターゲットにオークションをしたところ、当初の予測より大幅に高値で売れました。この経験から、高く売るためには徹底的に情報収集することが大事だと学びました。
また、あるときは、私どもを含めた3社の宅建業者で競争になったことがあります。それぞれが見つけてきたターゲットに入札申込書を送付し、オークションを行うのです。この場合、一番高値をつけた買手を紹介した宅建業者が勝者というわけです。
さっそく情報を集めに対象地に赴いたところ、売却対象地の隣で工事をしていました。そこを開発しているということは、対象地も一緒に買い上げて広く開発したいのではないかと考えました。それでターゲットの中にその開発会社を入れて声をかけたのです。結果、オークションが開き終わると、その開発会社がぶっちぎりで入札額のトップでした。
後から分かったことでは、他の2社も遅れてその開発会社に声をかけていたようです。しかし、先にこちらがその開発会社を確保していたので他の2社は手を出すことができませんでした。こんなふうにちょっとした差で勝負が分かれることもあるのです。
どうしても必要な情報が集まらないときは、場合によっては自腹を切ってでも信用調査機関などから情報を取り寄せます。それくらいターゲットの絞り込みはオークションの結果を左右する大きなファクターなのです。