市場より高い値段でも、落札者は大満足!?
売主が気にかかる点としては「買主側は相対取引よりもはるかに高い値段で買うことになるのに不満に思わないのだろうか」というところでしょうか。相対取引なら安く買えるのに「どうしてわざわざ高い値段を出して買おうとするのだろう」と不思議に思うのも無理はありません。
しかし、買主側からすると「それだけ高いお金を出しても欲しい」ということなのです。ですから、たとえ高額でも「手に入れられてラッキー」というのが本音です。
第8回からお伝えしている、対象地の隣で工事をしていた開発業者にオークションを持ちかけて成功した話にしても、開発業者にしてみれば「隣の土地だったから是が非でも手に入れたかった」のです。他の離れた土地では意味がありませんでしたから、それだけの価値があったということです。土地というのは、1つとして同じものは存在しません。同じ形の同じ面積の土地でも、立地が違えば全くの別物です。「その土地だから欲しい」という相手だからこそ満足してもらえますし、そういった相手を見つけるのがオークションの醍醐味とも言えます。
一般不動産のオークションが普及しない理由
これだけ良いこと尽くめのオークションなのに、ほとんどの人はその存在を知りません。書籍『不動産は「オークション」で売りなさい』で初めて知ったという読者も多いのではないでしょうか。
これまで、不動産のオークションというと、裁判所の競売や役所による公有地の入札、土地区画整理の保留地の入札、あるいは破産管財人が行う管財物件の入札による売却などでしか行われてきませんでした。差し押さえになった物件が競売にかかるケースもありますが、抵当権の対象でも何でもない一般の住宅用地を対象にしたものではありません。
弊社では普通の人が所有する普通の土地、しかも面積の小さな土地などであっても、オークションで売るという点で、特異といってよいと思います。
どうして弊社でやっているような一般不動産のオークションが普及しないかというと、入札の準備と手間が面倒くさいと感じて、避ける仲介業者が多いからです。
何がそんなに手間なのかというと、オークションに載せるために必要な事前準備やブラッシュアップに意外と時間と労力が要るからです。寿司屋で客に寿司を握って出すまでに、手間暇かけて仕込みをするのと同じです。大手仲介業者は、コツコツと事前準備をするよりも、相対取引でさっさとまとめてしまったほうが楽なので、そちらを選びます。
私たちがあえて手間のかかるオークションをやっているのは〝オークションこそが売主と買主の利益を最大限に引き出せる〟と確信しているからです。
やり始めた当初は迷いながら、ときには失敗もしながらでしたが、今ではノウハウや経験の蓄積ができており、比較的時間や労力をかけずに案件をこなすことができるようになりました。
例えば、現地調査をすれば、だいたい問題になりそうな部分にアンテナが反応します。「あれ、あそこは何だか気になるぞ」「前にも似たようなケースがあったから、よく見ておこう」というように、です。あるいは、ターゲットの絞り込みで「この物件とこの業種の企業を結び付けられるとベストだな」と目途を立てられたり、「このオークションは勝てる」と勘が働いたりします。
私たちは、回数を重ねることで手間のかかるオークションでも、うまくビジネスとして成り立たせることができるようになりました。そしてそれによって高値売却できるオークションをコンスタントに行うことが可能になったのです。
おそらく今後、不動産オークションの魅力に気づいて参入してくる業者も増えるかと予想しますが、たとえそうであっても弊社にはこれまでに培ったノウハウやデータがあります。ノウハウやデータは一朝一夕に積み上げることのできない種類の財産ですから、これからもきっとオークションで勝ち続けることができると思っています。