「瑕疵担保責任を負わない」旨の明記を
ステップ④(第3回参照)でオークションの前に入札要綱を作ると書きましたが、このとき事前に解消できない問題があれば、それを正直に売却条件として明記しておくことが何よりも重要です。隠し立てをしないことで、買主との信頼関係が築けます。
例えば、建物が残存している場合は、解体しておかないと買主側が土地を使いにくくなってしまうのですが、売主に手持ちのキャッシュがなくて事前に解体できないケースなどがあります。
このような場合、買主がどのくらいの解体費用がかかるかをすぐに把握できるように、私たちが事前に解体業者から解体見積書を取り受けて、入札要綱に添付しておきます。こうすることにより、買主の解体費用見積りの手間が省けるとともに、解体見積りがないことで買主が解体費用を過大に計上してしまい、それが買受価格の低下につながってしまうことを避けられるからです。
建物の解体ができていないという旨をあらかじめ売却条件の中に入れておき、買主からは添付した解体見積書による解体費用をマイナスして買受価格を提示してもらえば、買主は難点を分かったうえで的確な入札価格を検討できます。
また、重要なのが「瑕疵担保責任を負わない」という旨を明記することです。
瑕疵担保責任というのは、売却対象物件に一般の人間では簡単に発見できないような瑕疵(欠陥)があった場合、売主が買主に対して負わなければならない責任のことです。
例えば、土地を掘り起こしてみたら、地中から大昔に誰が埋めたか分からないようなゴミが大量に出てくることもあります。常識的に考えても、売主は地中深くのことまでは知りようがありませんから、これは気づかなくて当たり前の瑕疵です。
ところが、あらかじめ瑕疵担保責任は負わないと明記しておかないと、実際にそのようなことが起こったときに後から責任を負わされるリスクが生じてしまいます。なので、入札要綱には忘れずに明記しておきたい一文です。
売主が瑕疵を知っていた場合は、無効になるケースも
ただ注意をしたいのは、売主が瑕疵を知っているにもかかわらず買主に伝えていなかった場合です。これは「責任を負わない」といくら特約を明記したところで、民法572条によりこの特約は無効となります。
瑕疵担保責任を巡っては、プラスチック加工工場の事例がありました。
事前の売主からの聞き取りでは「地中には何も埋まっていない」とのことで、こちらも安心していたのですが、物件引き渡し後に買主が工事を始めたところ、地中からガラスの破片がたくさん出てきてしまいました。
後から売主に尋ねると「このガラスはプラスチック加工の過程で使ったもの」との説明がありました。これでは明らかに売主側の落ち度です。入札要綱と売買契約書には「瑕疵担保責任は負わない」との特約が明記されていましたが、売主が事情を知っていて買主に告げなかったので、裁判となればこの特約は無効と判断される可能性が大です。
そこで売主と買主で改めて協議をし、売主側が撤去費用の数千万円を負担することでどうにか決着しましたが、私どもにとっては「売主の言葉を鵜呑みにしてはいけない」と反省も大きかった事例です。
改正民法では、現行法下の瑕疵担保責任を廃止して、売主には、欠陥のない目的物を引き渡さなければならない契約上の責任があり、欠陥のある土地・建物を引き渡した場合には、売主は債務不履行として契約不適合の責任を負うとしました。改正民法においても、契約不適合責任を免責する特約を付けることは可能です。改正民法は、平成32年4月1日から施行されます。