今回は、注文住宅を建てる際の理想的な業者の条件と選び方を見ていきます。※本連載では、公認会計士・千日太郎氏の著書、『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、「価格の下がらない物件」の選び方を解説していきます。

「プロならではアイデア」を出せる業者か?

すでにある物件を購入するのと違い、ゼロから作り上げていく注文住宅ではとにかく決めなければならないことが山ほどあります。断熱材、床材、床暖、窓ガラス……これらの価格相場や性能を全部把握して決めることは、素人にはまず不可能です。つまり、信頼できるパートナーを選べるかがキーになってきます。

 

まず気になるのが、価格相場でしょう。できれば安くていい家を建てたい、と考えるのが人の常です。

 

例えば、延床面積が35坪の場合、ハウスメーカーでの坪単価の相場はおよそ50万〜60万円ほどといわれます。では、坪単価が安い業者から選べばいいのでしょうか?

 

答えはNoです。最初に見せられる新築一戸建てのトータル金額は安く思えても、目に見えない部分で安いものを使っており、実は割高になっている可能性もあります。こういうことは、仕様を決める際、業者と打ち合わせを重ねていけば自ずとわかってきます。

 

つまり、「坪単価なんて意味がない」のです。もちろん出せるお金には限りがあるため、結果として「坪単価をここまで抑える」という視点は必要ですが、それは家を建てるまでのプロセスで無数の取捨選択を行った結果です。

 

注文住宅を建てるまでに業者に求めるのは、「その無数の取捨選択で適切なアドバイスを受けられること」「プロならではのアイデアを出してもらうこと」です。安い材料、手抜き工事で安く上げることではありません。

 

相場をひとつの目安として活用することを否定しているのではありません。しかし、家を構成するすべてを把握したうえでコストパフォーマンスを判断するといったことを素人にできるわけがないのです。坪単価の安さばかり強調する業者は、まだそういうことをわかっていない初心者を取り込もうとしている可能性もあるということです。

「顧客の要望」をすべて受け入れる業者は危険!?

工務店にとっては、サッサと設計を決めて完成させ、代金を回収するのが効率的です。ですから、こちらの要望をすべて反映してくれるというのは眉唾です。多くの買い手は家のことを何もわかっていないのです。その何もわかっていない人たちの要望をすべて反映したら、どんな家になるのでしょうか?

 

私の知る大工さんの話です。施工中の図面でトイレのドアが内開きになっていたそうですが、住居のトイレのドアは外開きにするのが普通です。万が一トイレの中で倒れた際に、身体が邪魔になり外からドアを開けて助けに入れないためです。

 

その大工さんは建築士に、「これは図面の間違いではないのか?」と聞いたのですが、返ってきた答えは「お客様がそのほうがいいといったので内開きで間違いない」ということでした。お客様はまだ若いため、トイレで倒れることもないだろうから、そうしたリスクがあるという説明もしていなかったそうです。

 

どう思いますか?住む人が若くても、そこのトイレを高齢の両親が使うことだってあります。内開きにしたいという理由が、もし廊下が狭いからというものであれば引き戸にする方法もあります。要望の裏にある「なぜそうしたいのか?」ということをたしかめもせず、「これがお客様の要望だから」という理由ですませて、サッサと着工してしまうことほど危険なことはないと思います。

 

お客様の要望に耳を傾け、それを形にしていくのがプロの仕事です。新しい価値観、あるべき方向性、普遍的な価値、予算などのすべてをひっくるめて適切なアドバイスをし、最適なプランを提示してもらえることが、本当のバリューではないでしょうか。

「家づくり」に対して誠実な業者を選ぶ

また、一流のプロに頼みさえすれば最高の理想の家を建てられるとは限りません。

 

こちらの要望を担当者が現場にしっかり伝えてくれなければ、お願いする相手が大手でも、また高いスキルを持った業者であっても、まったく意味がありません。「しっくりこない」「話がかみ合わない」と感じてしまう担当者と、一般的に見て「いい家」を作ったとしても、こちらのニーズを満たしてくれていなければ、まったくの本末転倒です。こちらのニーズを引き出してもらうためには、お互いの信頼関係が不可欠です。

 

「こっちは客なんだから何でもいえる」と思っていても、実際に打ち合わせがはじまると、意外と自分の希望を伝えることはできないものです。理想と現実のギャップを知り、誰もが自分にウソをつきはじめるからです。「これをやると値段も高くなるからな……よく考えたらそんなのいらないし」。こう勝手に自分で判断して、セーブしてしまいがちになるのです。自分についたウソは、相手が自分であるだけに、見破るのが難しくなります。こちらの潜在的な気持ちを引き出してくれる、プロならではの提案をもらえる、そんなパートナーシップを築けるような担当者が、よい家を建てるためには必要です。

 

客に対して誠実な担当者と家づくりに対して誠実な担当者、どちらがパートナーとしてふさわしいと思うでしょうか?私は後者だと思います。

 

いろいろな住宅展示場へ見学に行き、複数の業者から見積もりや提案を受けるのは、作りたい家のイメージや予算に合うところを探すという表面的な目的だけではありません。そこで対応する担当者が、「家づくりのパートナーとしてふさわしいか?」という視点で見ていくのも、とても大事なことなのです。

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    本連載は、2018年2月10日刊行の書籍『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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