今回は、新築マンションのモデルルームを見学する際のチェックポイントをご紹介します。※本連載では、公認会計士・千日太郎氏の著書、『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、「価格の下がらない物件」の選び方を解説していきます。

「注意深く見ればよかった・・・」と後悔しないために

モデルルームの見学と、間取り図の見方にはポイントがあります。これを知っているだけで、何百万円もの価値があります。

 

本格的にマンション購入の検討をはじめると、モデルルームを見学することになると思います。

 

そのとき「注意深く検討すれば知りえたこと」で、後悔したくないのはみな同じです。

畳数、LDK・・・広く見える「錯覚」を起こさせる仕掛け

モデルルームを訪れると、「間取り図表記の畳数より狭い」と感じるかもしれません。その感覚は正解です。間取り図の畳数は少し水増しされて書かれていることがあるからです。次のようなマジックがあります。

 

◆モデルルームのマジックと注意点

 

①畳数の表記のマジック

②LDKを広く錯覚させるマジック

③家具は低いものが多く、収納家具が少ない

④天井の形状(ギロチン天井に注意)

⑤オプションだらけの内部造作

 

①畳数の表記のマジック

 

マンションの一畳は1.62㎡以上で表示するルールが不動産公正取引協議会の決まりになっていますが、「約6畳」とか「6J」などと、ウソにならない範囲での表示方法を考えてやっています。別途㎡での広さを教えてもらい、自宅の部屋と比較すべきです。

 

②LDKを広く錯覚させるマジック

 

LDK(リビング・ダイニング・キッチン)の畳数は、キッチン込みでカウントされます。畳数が2ケタになると十分な広さがあるように思ってしまいますが、実際にリビングとして使えるスペースはそんなにありません。

 

LDKの表示は10畳以上からです。LDK10畳ならば、キッチンに最低3畳、実質的なリビング・ダイニングは7畳しかありません。つまり、少し広めの寝室くらいの大きさしかないのです。

 

最も売れる間取りの形は「3LDK」です。LDKを10畳以上にして、あと3つ部屋を作れば最も売れる間取りになりますよね。その狭いLDKを家具によって広く見せるのが、モデルルームのマジックです。

 

③家具は低いものが多く、収納家具は少ない

 

モデルルームの大きさはたしかに実寸ですが、全体的により広く見せるために家具は低いものが多く、収納家具は極端に少ないのです。モデルルームがオシャレで生活感のない所以です。

 

実際に引き渡しを受け、部屋に生活に必要な家具を入れると、必ずといっていいほどモデルルームの印象よりも狭い部屋になります。そのため、これより小さくなるものだという脳内補正を必ず行うようにしてください。そして、家で使っているベッドやソファ、テーブルなどのサイズを測っておき、モデルルームでシミュレーションをしてみてください。その家具を入れると、ドアの開閉ができないといったこともあるかもしれません。

 

④天井の形状(ギロチン天井に注意)

 

梁がギロチンのように大きく下がっている部屋もあります。普段の生活でかなりの圧迫感を感じるので、注意してください。同じ間取りタイプでも、階によって天井の形状は異なります。モデルルームは一番きれいな天井の部屋が採用されます。間取り図では点線で表現されています。

 

⑤オプションだらけの内部造作

 

玄関のドア以外の目につく造作は、すべてオプション工事で追加工事が必要と考えておいたほうがいいでしょう。ひどいものになると、リビングを広く見せるため、間取りさえも変更しています。

間取り図だけでは分からない「防音性能」

さらに気をつけたいのが、マンションのトラブルで最も多い「音のトラブル」の確認です。マンションの防音性能は、間取りと壁の厚さで決まります。いくら防音性能に優れているとはいえ、過信は禁物です。

 

「音」に関しては、間取り図単体では見えない部分があり、特に意識して見ていく必要があります。ポイントは次の3つです。

 

◆「音」で意識するポイント

 

①音に関する苦情の出にくい間取りを把握する

②上下隣の家族構成

③壁の厚さと工法

 

①音に関する苦情の出にくい間取りを把握する

 

「音」のトラブルは、部屋の中で主に滞在するところで発生しがちです。ということは、「隣との仕切りになる部分にどんな部屋があるのか?」ということも重要なポイントです。

 

バストイレやキッチンについては、そこですごす時間は限られているので、苦情になる可能性は低いです。また、収納スペースで音が出る要素は少ないですし、そこに滞在する時間も極めて短いでしょう。

 

これに対して、リビングや寝室、子ども部屋は要注意です。滞在時間も長く、音を出す、また逆に音に敏感になることが想定できるからです。

 

②上下隣の家族構成

 

マンションは共同住宅です。共同して生活を営んでいる面があるので、似た価値観、生活リズムであれば、トラブルを事前に回避できる可能性は高くなります。家族構成が似ていれば、生活音を出す時間帯や心理的な許容度も広がるでしょう。

 

③壁の厚さと工法

 

壁の厚さは最低200ミリ以上、気にする人なら330ミリ以上あるといいでしょう。また、床下に梁を配置した逆梁工法の改良版「ルネス工法」の場合、床と構造をつなぐ床束の代わりに床を軽量ビームで支え、構造との間に遮音ゴムを挟んでいるので、階下への遮音性がアップします(下記図表参照)。

 

[図表]遮音性を高める工法の違い

 

逆梁工法は、室内に目障りな梁や出っ張りがなく、最近竣工されているマンションでよく採用されていますが、ルネス工法は少し珍しい形です。つまり、「階下との間に収納がある間取り」のようなものです。そこにギッシリ物を詰めることで遮音効果はさらにアップするため、一石二鳥です。

 

ただし、過信は禁物です。子どもがドンドン飛び跳ねたりすれば、ルネス工法であっても、どんなに壁が厚くても、太鼓現象で振動は伝わります。

駐輪場・駐車場からの導線にも注意

正面玄関だけでなく、駐輪場や駐車場からの導線にも注意しましょう。最近はオートロックが主流なので、マンション内に入るときにはリモコンキーを使用するところがほとんどですが、駐車場や駐輪場とマンションをつなぐ勝手口にあたる出入口は鍵を使用します。

 

何度か鍵を使わないと駐輪場や駐車場に行けないというマンションもありますし、大きなマンションでは勝手口に行くまでの導線が意外と複雑なときもあります。急いでいるときに、すぐに自分の部屋にたどり着けるかどうかも重要なポイントです。それに、部屋の中に段差の少ないバリアフリーマンションと謳っていても、こうした共用部の生活導線にドアや段差が多いと本末転倒です。

本連載は、2018年2月10日刊行の書籍『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本

千日 太郎

日本実業出版社

本書では、「家と住宅ローンの専門家」の現役公認会計士である人気ブロガーが、マイホーム、住宅ローンという人生最大の買い物と契約の機会に際し、初心者が百戦錬磨のプロを相手に「家選びとお金」で損をしないためのアドバイ…

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