「無理・妥協をしないマイホーム」の新たな選択肢に
最近はリフォームの技術が上がっており、建て替えよりもコストが抑えられるということから、全面的にリフォームして使い勝手を上げるケースも増えています。このような建物や部屋の再生を、リフォームから一歩進んで、「リノベーション」といいます。
リノベーションは、単に費用を抑えるという目的だけではありません。元の建物の持っている「味」をうまく利用して、新築では出せない「ビンテージ感」を演出できるなど、お金をかけずに自分だけのこだわりの空間を手に入れながら、新築マンション同様の快適さ、使い勝手のよさを実現することもできます。
リーズナブルに理想の住空間が実現するリノベーションは、「無理をしない妥協もしない」というマイホームの選択肢として、徐々に注目されてきています。
フルリノベーションは「800万円未満」が目安
まずは気になる「リノベーション工事費用の目安」です。専有面積70㎡のマンションの部屋で、おおむね次のようになります。
◆リノベーション工事費用の目安
①工事費用500万円未満
②工事費用700万円未満
③工事費用800万円未満
④800万円超〜1000万円くらいまで
①工事費用500万円未満
元々ある設備を活かす、または譲れないポイントを絞ってメリハリのある内容にするなど、ある程度妥協することによって工事費用を削減する必要があります。デザイン的に凝ることは難しく、リノベーションというよりは、「リフォーム」に近い内容です。
②工事費用700万円未満
設備の中で一番費用のかかる水まわりをすべて交換し、加えてクロスや床の張り替えなどを行える価格帯です。設備や資材のグレードによって価格にもある程度の幅が生じることになります。
③工事費用800万円未満
マンションのフルリノベーションの中心的な価格帯です。いったんすべての内装を取り払ってスケルトン状態にするので、間取りの変更も可能になります。設備のグレードや資材にもよりますが、デザイン的にも凝ることができるようになってきます。
④800万円超〜1000万円くらいまで
かなり凝ったリノベーションが可能になります。家具も既製品を使わず造作する、オリジナル性の高い内容を求める場合は、このくらいの予算になります(戸建てでは一般的な価格です)。
リノベ費用が売値に組み込まれているケースも
ではリノベーションを前提とした場合の価格面、費用面での注意点です。次の3点に注意してください。
◆リノベーションの費用の注意点
①リフォームずみの築古マンションは、リフォーム費用が価格にオンされている
②専有面積とリノベ費用は比例する
③リノベ費用は足が出るもの
①リフォームずみの築古マンションは、リフォーム費用が価格にオンされている
リノベーションが注目されているとはいえ、まだまだ一般的には浸透していません。特に築古マンションでは、売主が内装や設備を新しくリフォームして販売することがまだ主流です。つまり、売値にはすでに売主によるリフォーム、リノベーション費用がオンされているのです。
たしかにきれいなのですが、それは新品だからであって、設備や資材のグレードはかなり廉価なものに抑えられています。それでも何百万円かは費用がかかっており、それが売値に組み込まれているのです。
②専有面積とリノベ費用は比例する
築古マンションでリフォームされていない場合、90㎡ほどの大きな部屋でも手ごろな値段になっている場合があります。「せっかくなら広い部屋のほうがいいな……」と思いがちですが、専有面積が広いと、リノベ費用もその分高くなるため注意が必要です。
フローリング資材は当然広ければ広い分だけ必要になりますし、無垢のフローリングは工賃も高くなります。撤去費用も広さに応じて高くなります。また、リノベーションの設計費は部屋の広さに比例します。家族の人数やどんな空間にしたいかで、必要な部屋の広さは変わってきます。居住空間は家族に合わせたジャストサイズにすることをお勧めします。
③リノベ費用は足が出るもの
リノベーション費用のしっかりとした見積もりは、実際に中古マンションを購入したあとでないと算出することができません。つまり、マンション購入時には、何となくの目安くらいしかわからないのです。
これはリノベーションの「あるある」ですが、自分のやりたいことをすべて詰め込むと、一般的な費用の目安から1〜3割ほど足が出てしまいます。意外なものに値が張るのです。前述のフローリングなどはその代表格です。
「共用部分の変更・管理規約の制限」には要注意
マンションでは「共用部分」を変更することができません。また、専有部分の使用方法やリフォームの範囲についてまで、管理規約による制限が存在することもあります。次の2点には注意が必要です。
窓や玄関ドア、ベランダ、構造などの共用部分は変更できない窓、玄関ドア、ベランダなどは自分の部屋内にあるので専用部分と勘違いしがちですが、これらはすべて共用部分です。なので、勝手に変更することはできません。
構造的に大空間を作りやすいのは、間取の角などに太い柱や梁がある「ラーメン構造」といわれるものです。柱や梁はマンションの躯体なので構造上は動かせませんが、それ以外の壁を抜いて間取りを変更しやすいのです。
キッチンなどの水まわりの位置を移動する場合、給水管なども移動する必要があり、水まわりの設備と配置の両方を変更すると工事費用が跳ね上がります。レンジフードの排気ダクトの経路によってはキッチンの移動が難しい場合もあるので、施工業者に確認してもらったほうがいいでしょう。
管理規約の「○○不可」に注意
さらに注意したいのが、マンションならではの管理規約による制限です。「フローリング不可」という規約がある場合、自分の部屋だからといって勝手にフローリングに変更することはできません。
「物件探し」と「施工業者選び」は同時進行で行う
情報収集と物件探しの際は、一般的な中古マンションの選び方に加えて、リノベーションでできること、できないことの予備知識は必須です。先走ってマンションを買ったあとで、「リノベ費用が足りなくなった」「イメージしていた間取りは構造上不可能」ということになったら目もあてられません。ですから、物件選びとリノベーションの施工業者選びは同時進行で行うのがベストです。
人気の地域では中古マンションはすぐに売れてしまいますし、リノベの条件に合う物件となるとかなり限られるので、なかなか物件が決まらず焦ってしまう人も多いです。とはいえ、慎重に選ばないと、自分たちの思い通りにリノベができないリスクがあるので注意してください。
「これは」と思う物件に出会ったら、施工業者と一緒に見学して、購入後にどんなリノベーションが可能か、どのくらい費用がかかるかについて相談しておくといいでしょう。そうすることで、購入後も、リノベ仕様の決定から完成までの流れをスムーズに運ぶことができるようになってきます。