厳しくなりつつある、投資用不動産への融資条件
カナガワ君 でも今って、高い利回りの物件が少ないって言われていますよね。
先生 実際、2017年5月、不動産向けの新規融資額はバブル期を超えて過去最高となったんだ。その背景には、アベノミクスによる景気回復や、2020年東京五輪開催に向けた不動産価格の高騰期待などもあるけど、2016年1月に日本銀行が導入した「マイナス金利政策」が大きく影響していると考えられているんだよ。
[図表1]不動産融資額の推移
カナガワ君 「マイナス金利政策」ってどういうものですか?
先生 マイナス金利政策とは、民間銀行は日本銀行の中にある日銀当座預金に一定額のお金を置かなければいけないけど、それを超える資金(超過準備)に対して-0.1%という「マイナス金利」を課すという制度なんだ。
カナガワ君 ゼロ金利どころではなくマイナス金利にすることで、日銀当座預金に置いておくのではなく、市場にお金をジャブジャブと供給させようとする、というわけですね。
先生 ざっくりいえば、そういうことだね。そんな状況のなか、不動産投資熱が高まったサラリーマンが急増したことや、金融機関もより高い金利や収益が得られる不動産投資に積極的に融資を続けたことで、不動産融資額の激増につながっているんだ。ところが、2016~2017年になると、少し雰囲気が変わってきたんだ。
カナガワ君 え、何が起きたんですか?
先生 金融庁や日銀で、「金融機関の投資用不動産に対する融資への監視を厳しくする方針」といった報道が出てきたんだよ。
カナガワ君 つまり、これからは融資が厳しくなる、と?
先生 そのようだね。実際、今まで会社員などにも積極的に融資していた「日本政策金融公庫」という金融機関でも融資の条件が厳しくなったんだ。以前は自己資金ゼロでも融資してくれていたけど、今は「2割程度の自己資金が必要」という担当者が多いようだね。また、借入期間は今まで20年とか25年のような長期で可能だったんだけど、今は「10~15年」と短くなっているようだよ。
カナガワ君 なるほど、融資条件がどんどん厳しくなっているんですね。
先生 そうだね。日本政策金融公庫以外の金融機関でも融資条件は厳しくなっていて、不動産投資情報サイト「楽待」編集部が「今年(2017年)に入って銀行の融資姿勢の変化を感じますか?」というアンケートを実施したんだ。すると、30%が「金融機関の融資姿勢が引き締められていると感じる」と回答したそうだ。具体的には、「メガバンクが3億円の資産を求めるようになった」、「融資年数が以前より伸びない」、「銀行の担当者から、『今までのようなオーバーローン、フルローンは出せない』という発言があった」という回答があったそうだ。
[図表2]今年に入って、銀行の融資体制の変化を感じますか?
融資が受けやすい今から開始し、実績をつくっておく
カナガワ君 じゃあ、今後もっと厳しくなったら、不動産投資がしづらくなってしまいますよね?
先生 そういうことだ。「今は不動産価格が高いから、安くなってから買いたい」という考えの人がいるけど、ちょっと景気が悪くなったり不動産が安くなったときは、金融機関は融資を引き締めるから融資を受けにくくなるんだ。
カナガワ君 なるほど・・・融資を受けやすい今が始めやすい時期なんですね。
先生 それに、もし不動産価格が下がってきた頃には、初めて不動産投資を始めるという実績のない新規の人には融資してくれないだろうね。
カナガワ君 じゃあ、不動産投資をしたい人はどうしたらいいんですか?
先生 属性ももちろん大事だけど、それ以上に家賃収入を得て、そのなかで不動産投資ローンを返済してキャッシュフローが出ているという「実績」が重視されるようになるだろうね。
カナガワ君 今から不動産投資を始めて、将来に向けて資産づくりを始めると同時に、不動産投資の実績をつくっていくことが重要なんですね。
先生 そうなるだろうね。不動産市況によらず、ちゃんと“いい物件”を購入すればちゃんとキャッシュフローが出るからね。「返済後利回りが2%」であれば、5000万円の物件を購入すると年間100万円が手元に残る。ほとんど何もしなくても、今の収入のほかに100万円が手に入るんだよ。やるか、やらないか。不動産投資をしなければ失敗もしないけど、成功もないんだ。
<Point!>
不動産価格が安くなったころには、
金融機関からの融資を受けにくくなってしまう。
融資を受けやすい今から始めて実績をつくっていくことが大事。