販売システム上、小売の利益が乗って価格が「割高」に
不動産投資の各論を始めるにあたって、まず注意しなければならない領域についてのお話をします。
新築区分マンション投資は、失敗する人が多い投資法です。
その理由は、まず価格の割高さにあります。新築マンションの販売は、不動産会社が仲介に入る中古と異なり、デベロッパーが建てて販売会社が売るという構図です。いわば小売店が利益をたっぷり乗せて売るため、消費者に届く頃には30%ほど割高になっています。2500万円で買った新築マンションの1室を翌日売ろうとしたら2000万円以下になってしまうのです。
同じ新築でも、一棟ものは区分所有ほど販売費用がかかりません。1棟10室のマンションであれば、1室ずつ売った場合に比べて集客にかかる広告費や人件費は単純に考えて10分の1で済みます。建築コストに大きな差はありません。モノが同じでも売り方によって価格が変わるのです。
購入価格が高いということは月々のローン返済が多いということになります。最初の入居者のときにはキャッシュフローがぎりぎり黒字になったとしても、退居されてしまうと一気に赤字に転落してしまいます。次の募集に際しては、家賃を下げる必要が出てくるでしょう。これを新築プレミアム家賃と言います。結果、満室にもかかわらず、ローン返済と経費が家賃収入を上回る「負動産」になってしまう。新築区分マンション投資で失敗する典型的なパターンです。
赤字がメリットであるかのような営業トークに要注意!
赤字になることが営業トークの時点で織り込まれているケースもあります。「節税」「相続対策」「年金代わりになる」などのうたい文句は聞いたことがあるかもしれません。これらの言葉を聞いたら要注意です。
たしかに帳簿上赤字が出れば給与所得から差し引くことができますし、ローン返済後には完全に自分の所有物件になるのも事実です。しかし、所得税の節税額が赤字額を上回ることはありませんし、同じ年金対策ならキャッシュフローが黒字になっているものの方がよいに決まっています。
何より、赤字が出続けている状態では事業として成り立っていません。そのような状況では新たに融資を受けることは難しく、規模を拡大することができなくなってしまいます。
マイホームかそれ以下の価格で買える区分マンションは年収500万円くらいのサラリーマン層にも手が届きやすく、営業トークに乗せられて安易に投資し、赤字を出してしまう人がよく相談に来られます。状況によってはリカバリーできることもありますが、勉強代としては高すぎる多額の損が出てしまう人が後を絶ちません。
新築区分マンション投資の問題点については、拙著『40歳独身のエリートサラリーマンが「不動産投資」のカモにされて大損した件』(幻冬舎)に詳しく著しています。興味がある方はご覧ください。